2.8.3 HSV

HSVはコンピュータで絵を書く場合や、色見本として使われる。これは、色を色相(色味)と彩度という観点から考える場合、加法混色や減法混色よりも自然だからである。HSVには色相 (hue)、彩度 (saturation value)、明度 (value) が含まれている。HSBとも呼ばれる。

 HSVモデル(HSV model)は、色相(Hue)、彩度(SaturationChroma)、明度(BrightnessLightnessValue)の三つの成分からなる色空間である。HSB色空間(HueSaturationBrightness)とも、HSV色空間(HueSaturationValue)ともいわれる。

色相の種類(赤、青、黄色のような)。0360の範囲(アプリケーションによっては0100%に正規化されることもある)。

彩度 - 色の鮮やかさ。0100%の範囲。刺激純度とcolorimeric purityの色彩的な量と比較して「純度」などともいう。色の彩度の低下につれて、灰色さが顕著になり、くすんだ色が現れ、また彩度の逆として「desaturation」を定義すると有益である。

明度 - 色の明るさ。0100%の範囲。

HSV1978年にアルヴィ・レイ・スミス(Alvy Ray Smith)によって考案された。これはRGB色空間の非線形変換であり、色の変換に用いられることもある。HSVHSBは同一であるがHLSとは異なることに注意すること。

HSVの視覚化

HSVモデルは通例コンピュータグラフィックスアプリケーションに用いられる。いろいろなアプリケーションでユーザは個々のグラフィックス要素に適用する色を選択する必要がある。このような場合、HSV色環がよく用いられる。これは円状の領域に色相が表現されたもので、それとは別に三角形の領域が彩度と明度の表現に用いられることがある。一般的に、三角形の垂直軸は彩度を指示し、また水平軸は明度に対応する。この場合、色は最初の操作で環状の領域から色相を選択することができ、それから三角形の領域から所望の彩度と明度を選択する。

HSVモデルの別の視覚化方法は円錐である。この表現では、色相は色環の三次元円錐状の構造に描かれる。彩度はその円錐の円形交差部分の中央からの距離、明度は円錐の頂点からの距離で表される。円錐ではなく六角形の錐体(六角錐)で表現するものもある。この方法は単一の物体でHSV色空間全体を視覚化するのに適しているが、その三次元的な性質のため二次元のコンピュータインターフェイスにおける色の選択には適していない。

HSV色空間は円柱状の物体として視覚化されることもあり、上記と同様に色相は円柱の外周に沿って変化し、彩度はやはり円状の交差点の中央からの距離に伴って変化する。明度もまた頂点から底へ向かって変化する。このような表現はHSV色空間のモデルとしてもっとも数学的に厳密であると考えられるかもしれないが、実際のところ視覚化された彩度レベルと色相の精度は黒に近づくにつれて明らかに減少する。さらに、通常コンピュータは有限の範囲でRGB値を格納する。精度の制限は人間の色認知能力の限界とも関連し、ほとんどのケースで円錐による視覚化はより現実的とされている。

Fig1_2_8_4

2.8.4 HLS

HLS色空間とは、色相(Hue)、彩度(Saturation)、輝度(Lightness/Luminance または IntensityFig1_2_8_53つの成分からなる色空間である。HSV色空間によく似ている。 HSLHSIと呼ばれることもある。HSVに近い表現法である。明度と輝度との違いは値の算出方法である。明度がrgb各色のビットを足して単純に3で割ったものであるのに対し、輝度は下に書かれているように各色の重み付けが違う。(比率 :0.29891 :0.58661 :0.11448) 明度より輝度の方がより人間の目から見た場合の明るさに近いといわれる。

色相:色味を0360度の範囲の角度で表す。0度は赤で、その反対側に位置する180度は赤の反対色にあたる青緑。すなわち、反対色を見つけるのも容易。色相についてはHSVと同じである。

彩度HSVとは違い、純色から彩度が落ちるということは、すなわち灰色になっていくという考え方に基づいている。

輝度:明度100%を純色とし、そこからどれだけ明るさが失われるかを示すHSVとは違い、輝度0%を黒、100%を白とし、その中間(50%)を純色とする。50%以下はHSVの明度を示し、50%以上はHSVの彩度を示すと考えると分かりやすい。

HLS色空間を使う代表的なアプリケーションとしては Microsoft Windows (ペイントを含む)、CSS3Paint Shop Pro などがある。 HSV色空間を使う代表的なアプリケーションとしては Mac OS XPhotoshopIllustrator などがある。 更に、両方をサポートするアプリケーションもある。