2.6.5 段階説

 三色説と反対色説とが長年論争されてきた。最近では、網膜の視細胞レベルでは三色説に、それ以降の神経細胞レベルでは反対色説に則って、光の処理がされていると考えられている。この説を段階説という。(下図参照)

 色覚モデルはたくさんの種類があり、未だに1つの説に絞られていないのが現状である。

Fig1_2_6_9
・三色説

ヤング=ヘルムホルツの三色説Young-Helmholtz theory)は、トマス・ヤングの説を、ドイツの生理学者ヘルマン・フォン・ヘルムホルツが発展させた色覚学説の1つをいう。

この説は、赤・青・緑の3色の感覚に相応する3種の組成子が網膜に存在すると仮定し、波長によって各組成子が様々な程度に興奮する結果、あらゆる色彩の感覚が生じるとした。赤緑物質と青黄物質の存在を仮説とするヘリングの反対色説と対照される主張するものである。つまり、色覚に赤、緑、青(あるいは紫)の3要素があり、これらが同じ割合で刺激されると白色を感じる。色別は3要素の刺激の比率に応じて生じる、というものである。その後、網膜の色覚受容器である錐状体に、赤、緑、青 (RGB) に最もよく反応する3種が区別された。これらの要素の1つないし2つを欠くと色盲となり、感度の鈍いものは色弱となる。大部分の色盲表やカラーフィルム、カラーテレビはこの説を応用している。

・反対色説

エバルト・ヘリングKarl Ewald Konstantin Hering, 183485 - 1918126は、ドイツの生理学者、心理学者で、色覚についての研究を行ったことで知られ、ヤング=ヘルムホルツの三色説に対し、赤と緑を加法混色して黄色が知覚されるのは無理がある、と考え、反対色説 (Opponent process) を唱えた。

Fig1_2_6_10反対色説は、エバルト・ヘリングによって提出された色の知覚機構理論である。対比、残像などの現象をもとにして、網膜に 3種の対をなす視物質があると仮定し、これらの光に対する生化学的な反応に基づいて色覚が成立するとみなす。3種の視物質は白-黒物質、黄-青物質、および赤-緑物質と名づけられ、それぞれ異化によって白、黄および赤の感覚を生じ、同化によってそれぞれ黒,青および緑の感覚を生じると考えられた(反対色)。以上のようなことから、この説は反対色説とも呼ば、,また、赤、黄、緑、青を四つの基本色と想定するので。、四色説とも呼ばれる。

 

2.6.6. 反射と透過

 反射reflection)は、などのがある面で跳ね返る反応のことである。

・弦の振動の反射

ひもや弦などを振動させると、そのは周囲に伝わっていく。その時終端において反射が起きる。反射は終端によって2種類に分けられる。

・固定端反射 

終端を固定したときに起きる反射。振幅が反転した波が反射される。

・自由端反射 

Fig1_2_6_11終端を固定せず自由に動ける状態にしたときに起きる反射。同じ振幅の波が反射される。

また、透過とは、可視光線)に対してのことをいう。そして光は電磁波の一種であるので科学的に一般化して、ある物質がある電磁波に対して透明であるとは、その物質と電磁波との間に相互作用が起こらず、電磁波の吸収および散乱が生じないということを意味する。ある物質が電磁波を吸収する場合、その物質は吸収した波長補色に色づいて見える。例えば、葉緑素色に相当する680 ~ 700 nmの波長の光を吸収するため、補色の色に見える。

Fig1_2_6_12-反射(reflection反射は、波が異なる媒質との境界面にぶつかり、その一部がもとへ戻る現象である。粒子線の反射は粒子線の波動性に基づいて起こる。波の波長に比べて境界面が滑らかであれば、反射の法則に従う方向に反射波が生じ、境界面の凹凸が波長と同じ程度であれば反射波はいろいろな方向に広がる。後者を乱反射といい、これに対して反射の法則に従う場合を鏡面反射という。-透過(permeation透過は、光や放射能などが物質の内部を通り抜ける現象である。

例えば、赤色の半透明材料に太陽光などの白色光を照射すると赤色成分以外の光はすべて吸収され赤色のみ通過するために人間の目には赤色として弁別(知覚)される。

透過率(transmittanceまたは透過度とは、光学および分光法において、特定の波長の入射光が試料を通過する割合である。これに対して吸光度(absorbanceは分光法において、ある物体を光がFig1_2_6_13通った際に強度がどの程度弱まるかを示す無次元量である。光学密度(optical densityとも呼ばれることがある。吸収・散乱・反射をすべて含むため、吸収のみを表すものではない。

 

2.7 光学濃度(OD:optical density)

画像の濃さの客観表現に用いられるもので、画像着目部の反射率RとするときD=log10(1/R)で定義する。透過画像場合R過率T置換される。測定光学系や光源、分光分布特性ついて各種異な測定条件があり、注意が必要である。

また、単なる濃度とは、印画紙やフィルム上の画像の濃さを表わす尺度である。印画紙の場合は不透明なので、光を反射する量が少ないほど濃度が高くなる。フィルムの場合は光が透過する量が少ないほど濃度が高くなる。Densityの頭文字をとってDの単位で表示する場合がある。

Fig1_2_7_1
吸光度
(absorbance)は、光散乱がなく単純な透過吸収しかおこっていない範囲ではまったく同じものである。定義は透過率transmittanceの逆数の常用対数で示したものである。  
しかし、細胞懸濁液などの場合は必ず光散乱が伴っている。この場合においては、吸光度という言葉は使わない。吸光度は、本来あくまでも散乱のない系について定義され、使用されるものである。

一方、上述した光学濃度(光学密度)は、散乱があろうがなかろうが、測定条件における透過率から機械的に上記の定義に従って計算されるものなので、この場合は吸光度とも absorbanceともいうことはない。

物理的な意味はともかくとして、absorbanceに対する訳語は吸光度であり、optical densityに対する訳語は光学濃度あるいは光学密度である。これらを混用することは、誤訳である。

細胞の濃度を測る場合は光の散乱を利用するので「濁度」と呼ぶことが多いようであるが、densityは密度であるから光学密度とでも訳すのがいいのかもしれない。しかし、これだと別な意味にとられることが考えられるので、一般的には光学濃度になるのがよい。これは、光のエネルギーが吸収されるわけではないので「吸光度」では違和感があるのがと考えられる。