2.5.2 測光・放射測定
光放射エネルギーに対して時間的・空間的な量を組み合せることによって構築される量を「放射量」という。これに、光放射が人間の視覚に対して与える影響を波長に対する重みづけ(分光視感効率)として加えたものを「測光量」という。
単位時間当たりの光放射エネルギーを「放射束(Radiant Flux)」という。光源を点光源と見做し、その中心を頂点とする微小錐体を考え、そこに含まれる微小放射束を立体角で割ったもの(放射束の立体角密度)を「放射強度(Radiant Intensity)」という。これに対し、有限の面積を有する光源を考える場合には、その単位面積当たりの放射強度を考え、これを「放射輝度(Radiance)」という。また、受光面の単位面積当りに入射する放射束の量を「放射照度(Irradiance)」という。このような光放射に関する諸量(放射量)について、物理的に放射を測ることを、総称して放射測定(radiometry)という。
これに対して、測光量は、放射量に対して光放射(可視領域の放射)が人間の視覚に与える影響を重みづけした量として表されるものであり、放射量の分光密度(微小波長幅に含まれる放射量をその波長幅で割ったもの)に分光視感効率:V(λ)をかけて可視領域(360nm~830nm)の波長範囲について積分したものである。分光視感効率:V(λ)は、可視放射が人間の目に入ったときに感じる明るさの知覚の度合い示す尺度であり、下図のように定められている。この値は、CIE(Commission Internationale de l'Éclairage; International Commission on Illumination:国際照明委員会)によって1924年に採用され、後に補間と補外を行って完全なものとし、1972年に国際度量衡総会(CIPM)において勧告されたものである。横軸は光放射の波長(nm)、縦軸は波長:555nm の単色放射に対して感ずる明るさを 1 として正規化した時の、その他の波長で感ずる同じ放射強度の明るさの比、という形で表されている。これによると、例えば波長:470nm の光は、物理的には同じ放射強度であっても、波長:555nm の光の約10分の1 の明るさにしか感じないことになる。このような、光放射に対する人間の感ずる「明るさ」を与えるための分光視感効率:V(λ)に基づいた測定を、総称して測光(photometry)という。
(厳密には、測光量には明所視量と暗所視量があるが、ここでは明所視の場合についてのみを説明している。暗所視の場合には、分光視感効率:V'(λ)を用いる。)
一般的には、ある放射量:Xeの分光密度をXeλとしたとき、対応する測光量:Xvは
で表される。ここで、比例定数:Kmは最大視感効果度と呼ばれる量で、V(λ)=1となる波長(λ = 555nm)において測光量と放射量を関係づける値であり、Km = 683[lm/W]と規定されている。
刺激を与える側、すなわち「光」の電磁的エネルギーを「放射量」といい、電力などと同じ「ワット [ W ] 」を基本単位として表記される。また、刺激を受ける側の人間の眼がその光からどれだけの刺激を受けるか、すなわち、人間の眼が感じる「明るさ」を「測光量」という。「測光量」は、「ルーメン [ lm ] 」という単位を基本単位として表わされる。

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測光量の場合、基本となるのは放射量での「放射束」に対応する「光束(Luminous Flux)」であり、光束の立体角密度として「光度(Luminous Intensity)」が表される。光度は放射量の放射強度に対応する量ということになる。
同様にして、「輝度(Luminance)」や「照度(Illuminance)」が定義されている。
主な測光量と対応する放射量
主な測光量 |
単位 |
主な放射量 |
単位 |
光束(Luminous Flux) |
lm(ルーメン) |
放射束(Radiant Flux) |
W |
光度(Luminous Intensity) |
cd(カンデラ) |
放射強度(Radiant Intensity) |
W/sr |
輝度(Luminance) |
cd/m2 |
放射輝度(Radiance) |
W/sr/m2 |
照度(Illuminance) |
lx(ルクス) |
放射照度(Irradiance) |
W/m2 |
測光量の1つである光度の単位:カンデラ(cd)は国際単位系(SI)の7つの基本単位の1つであり、重要な物理量(厳密には心理物理量)であることから、その単位を国家標準として設定・維持・供給していくことは様々な産業開発の基礎を支える上で極めて重要である。そして、光度(cd)に関連した他の測光量についても同様に長年に渡って国家標準の維持・供給が行われている。
現在ではカンデラ(cd)は下記のように定義されており、極低温放射計に基づいた新しい光度単位の設定とそれに基づく高精度測光標準の確立が図られている。
カンデラ(cd)の定義(1979年改訂)
「1カンデラ(cd)は、周波数540×1012Hz(波長555nm)の単色放射を放出し、所定の方向におけるその放射強度が1/683ワット毎ステラジアンである光源の、その方向における光度である」
この他、放射量を分光的に定義した量も、主にスペクトル標準としての意味合いから広く用いられており、放射輝度の分光密度である「分光放射輝度(Spectral Radiance)」、放射照度の分光密度である「分光放射照度(Spectral Irradiance)」などが重要である。
さらに、現在の測光・放射測定に必要不可欠である検出器についての分光感度を表す「分光応答度(Spectral Responsivity)」、光源の分光分布を黒体放射炉の温度と関連づけて表す「分布温度(Distibution Temperature)」、物体の光学的特性を表す基本的な量である「分光反射率(Spectral Reflectance)」「分光透過率(Spectral Transmittance)」などについても、重要な測光・放射量として挙げられる。
2.5.2 測光・放射測定
光放射エネルギーに対して時間的・空間的な量を組み合せることによって構築される量を「放射量」という。これに、光放射が人間の視覚に対して与える影響を波長に対する重みづけ(分光視感効率)として加えたものを「測光量」という。
単位時間当たりの光放射エネルギーを「放射束(Radiant Flux)」という。光源を点光源と見做し、その中心を頂点とする微小錐体を考え、そこに含まれる微小放射束を立体角で割ったもの(放射束の立体角密度)を「放射強度(Radiant Intensity)」という。これに対し、有限の面積を有する光源を考える場合には、その単位面積当たりの放射強度を考え、これを「放射輝度(Radiance)」という。また、受光面の単位面積当りに入射する放射束の量を「放射照度(Irradiance)」という。このような光放射に関する諸量(放射量)について、物理的に放射を測ることを、総称して放射測定(radiometry)という。
これに対して、測光量は、放射量に対して光放射(可視領域の放射)が人間の視覚に与える影響を重みづけした量として表されるものであり、放射量の分光密度(微小波長幅に含まれる放射量をその波長幅で割ったもの)に分光視感効率:V(λ)をかけて可視領域(360nm~830nm)の波長範囲について積分したものである。分光視感効率:V(λ)は、可視放射が人間の目に入ったときに感じる明るさの知覚の度合い示す尺度であり、下図のように定められている。この値は、CIE(Commission Internationale de l'Éclairage; International Commission on Illumination:国際照明委員会)によって1924年に採用され、後に補間と補外を行って完全なものとし、1972年に国際度量衡総会(CIPM)において勧告されたものである。横軸は光放射の波長(nm)、縦軸は波長:555nm の単色放射に対して感ずる明るさを 1 として正規化した時の、その他の波長で感ずる同じ放射強度の明るさの比、という形で表されている。これによると、例えば波長:470nm の光は、物理的には同じ放射強度であっても、波長:555nm の光の約10分の1 の明るさにしか感じないことになる。このような、光放射に対する人間の感ずる「明るさ」を与えるための分光視感効率:V(λ)に基づいた測定を、総称して測光(photometry)という。
(厳密には、測光量には明所視量と暗所視量があるが、ここでは明所視の場合についてのみを説明している。暗所視の場合には、分光視感効率:V'(λ)を用いる。)
一般的には、ある放射量:Xeの分光密度をXeλとしたとき、対応する測光量:Xvは
で表される。ここで、比例定数:Kmは最大視感効果度と呼ばれる量で、V(λ)=1となる波長(λ = 555nm)において測光量と放射量を関係づける値であり、Km = 683[lm/W]と規定されている。
刺激を与える側、すなわち「光」の電磁的エネルギーを「放射量」といい、電力などと同じ「ワット [ W ] 」を基本単位として表記される。また、刺激を受ける側の人間の眼がその光からどれだけの刺激を受けるか、すなわち、人間の眼が感じる「明るさ」を「測光量」という。「測光量」は、「ルーメン [ lm ] 」という単位を基本単位として表わされる。

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測光量の場合、基本となるのは放射量での「放射束」に対応する「光束(Luminous Flux)」であり、光束の立体角密度として「光度(Luminous Intensity)」が表される。光度は放射量の放射強度に対応する量ということになる。
同様にして、「輝度(Luminance)」や「照度(Illuminance)」が定義されている。
主な測光量と対応する放射量
主な測光量 |
単位 |
主な放射量 |
単位 |
光束(Luminous Flux) |
lm(ルーメン) |
放射束(Radiant Flux) |
W |
光度(Luminous Intensity) |
cd(カンデラ) |
放射強度(Radiant Intensity) |
W/sr |
輝度(Luminance) |
cd/m2 |
放射輝度(Radiance) |
W/sr/m2 |
照度(Illuminance) |
lx(ルクス) |
放射照度(Irradiance) |
W/m2 |
測光量の1つである光度の単位:カンデラ(cd)は国際単位系(SI)の7つの基本単位の1つであり、重要な物理量(厳密には心理物理量)であることから、その単位を国家標準として設定・維持・供給していくことは様々な産業開発の基礎を支える上で極めて重要である。そして、光度(cd)に関連した他の測光量についても同様に長年に渡って国家標準の維持・供給が行われている。
現在ではカンデラ(cd)は下記のように定義されており、極低温放射計に基づいた新しい光度単位の設定とそれに基づく高精度測光標準の確立が図られている。
カンデラ(cd)の定義(1979年改訂)
「1カンデラ(cd)は、周波数540×1012Hz(波長555nm)の単色放射を放出し、所定の方向におけるその放射強度が1/683ワット毎ステラジアンである光源の、その方向における光度である」
この他、放射量を分光的に定義した量も、主にスペクトル標準としての意味合いから広く用いられており、放射輝度の分光密度である「分光放射輝度(Spectral Radiance)」、放射照度の分光密度である「分光放射照度(Spectral Irradiance)」などが重要である。
さらに、現在の測光・放射測定に必要不可欠である検出器についての分光感度を表す「分光応答度(Spectral Responsivity)」、光源の分光分布を黒体放射炉の温度と関連づけて表す「分布温度(Distibution Temperature)」、物体の光学的特性を表す基本的な量である「分光反射率(Spectral Reflectance)」「分光透過率(Spectral Transmittance)」などについても、重要な測光・放射量として挙げられる。