アンディマンのテクノロジー(援技力)

写真表現に関わる専門的な知識を補うために設けたブログです。 新たらしい時代に相応しい技術情報を掲載していきます。 普段疑問に思った問題の解決に繋げるテーマを醸成していきます。

2019年02月

人間の感性に沿った色の表現方法(色空間の考え方)

HSVモデル(HSV model)は色相(Hue)、彩度(SaturationChroma)、明度(ValueLightnessBrightness)3つの成分からなる色空間である。一般的にはHSV色空間というが、HSL色空間(HueSaturationLightness)あるいはHSB色空間(HueSaturationBrightness)とも言われる。 (下図左側)

ICS_画像表現_色差_2

色相 - 色の種類(例えば赤、青、黄色)。0 - 360の範囲(アプリケーションによっては0 - 100 % に正規化されることもある)。

彩度 - 色の鮮やかさ。0 - 100 % の範囲。刺激純度と colorimetric purity の色彩的な量と比較して「純度」などともいう。色の彩度の低下につれて、灰色さが顕著になり、くすんだ色が現れる。また彩度の逆として「desaturation」を定義すると有益である。

明度 - 色の明るさ。0 - 100 % の範囲。

HSV1978年にアルヴィ・レイ・スミス(Alvy Ray Smith)によって考案された。これはRGB色空間の非線形変換であり、色の変換に用いられることもある。HSVHSBは同一であるがHLSとは異なる。

HSVモデルは通例コンピュータグラフィックスアプリケーションに用いられる。いろいろなアプリケーションでユーザは個々のグラフィックス要素に適用する色を選択する必要がある。このような場合、HSV色環がよく用いられる。これは円状の領域に色相が表現されたもので、それとは別に三角形の領域が彩度と明度の表現に用いられることがある。上図における三角形の水平軸は明度を指示し、また垂直軸は彩度に対応する。このような形式のインターフェースでは、最初の操作で環状の領域から色相を選択し、続いて三角形の領域から所望の彩度と明度を選択する。

HSV色空間の円柱

上図右側に示すように、HSVモデルの別の視覚化方法は円錐である。この表現では、色相は色環の三次元円錐状の構造に描かれる。彩度はその円錐の中心からの距離、明度は円錐の頂点からの距離で表される。円錐ではなく六角形の錐体(六角錐)で表現するものもある。この方法は単一の物体でHSV色空間全体を視覚化するのに適している。三次元形状のため二次元のコンピュータインターフェイスにおける色の選択に利用するのは難しい。

HSV色空間は円柱状の物体として視覚化されることもある。上記と同様に色相は円柱の外周に沿って変化し、彩度は中心からの距離に伴って変化する。明度も頂点から底へ向かって変化する。このような表現はHSV色空間のモデルとして数学的に厳密であると考えられるかもしれないが、視覚化された彩度レベルと色相の精度は黒に近づくにつれて減少する。さらに、通常コンピュータは有限の範囲でRGB値を格納する。精度の制限は人間の色認知能力の限界とも関連し、ほとんどのケースで円錐による視覚化はより現実的とされている。

HSVと色覚

HSVモデルと人間が色を知覚する方法が類似しているため、グラフィックデザイナーはRGBCMYKのようなモデルよりHSVカラーモデルを用いることを好むことがある。RGBCMYKはそれぞれ加法混合と減法混合によるモデルであり、どちらも原色の組み合わせによって色が定義される。それに対しHSVはより人間と親和性のある内容、この色は何色か・鮮やかさはどのくらいか・明るくしたり暗くするにはどうしたらいいか、で色についての情報をカプセル化する。HLS色空間も同様に直感的に理解しやすい。

HSV三刺激値空間は、放射測定された物理的なパワースペクトルへ一対一に対応させることはできない。従って、HSV座標と波長や振幅といった物理的な光の性質の間を対応させる方法は存在しない。もし物理的直感が必要であれば、以下のような「色彩測定」の心理物理的技術を用いて、HSV座標系を擬似的に変換することは可能である。

色相は色の主波長を定義し、色相はスペクトルに沿った波長位置を意味する。ただしインディゴから赤の間(およそ240 - 360度)は純紫線(ピュアパープルの線)上を示す。

もし色相知覚が再現されれば、実際単色では主波長に位置する純粋なスペクトル色を利用し、「脱飽和」は適用された主波長の頻度分布あるいは単色光に同じ力の量の光(例・白)を加算することとだいたい同じことになるだろう。

明度はスペクトラムのパワーの総量または光の波形の最大振幅にほぼ類似する。しかしながら、実際のところ明度が最大のスペクトル成分(統計学「モード」、この分布に直交し累積した力ではない)に近いことは以下の方程式から分かる。

RGBからHSVへの変換

RGおよびB0.0を最小量、1.0を最大値とする0.0から1.0の範囲にあり、(R,G,B)で定義された色が与えられたとすると、それに相当する(H,S,V)カラーは次のような数式により決定することができる。

R,G,B3つの値の内、最大のものをMAX、最小のものをMINとすると、この式は次のように書ける。(HSVからRGBへの変換式もあるが、ここでは省略する)

ICS_画像表現_色差_マクアダム_楕円_1b














結果は(H,S,V)形式である。H0.0から360.0まで変化し、色相が示された色環に沿った角度で表現される。SおよびV0.0から1.0までの範囲で変化する彩度および明度である。角座標系で、Hの範囲は0から360までであるが、その範囲を超えるH360.0で割った剰余(またはモジュラ演算)でこの範囲に対応させることができる。例えば-30330と等しく、480120と等しくなる。

この式はHSVの他の性質も示す。

MAX = MIN(例・S = 0)のとき、 Hは定義されない。上記のHSV空間の図を参照するとよい。もしS = 0ならこの色は中央のグレイの直線の周囲にあり、従ってこの色には彩度がなく、角座標には意味がない。

円柱モデルでMAX = 0(例・V = 0)のとき、Sは未定義である。これは上記の円錐状の図に最もよく表れている。もしV = 0ならこの色は完全な黒であり、この色に色相も彩度もない。従って円錐状の図は単一の点に潰れ、この点では角度も角座標系も無意味である。

L*a*b*色空間での適用例

 L*a*b*色空間は、人間の色覚を司る視覚要素を取り込んだ三次元でかつ、均等な色空間を創り出している。そのため色を扱う業界ではデファクトスタンダードになっている。

色覚は、「見えの三要素」である「光源」「物体」「視覚」の3つの要素をベースに、光の波長の相違によって起る視覚の質的差異をいうが、視覚する色は赤R、緑G、青Bの三原色に黄色Yを加えた4色(これを視覚四原色という)で色を弁別(識別)している。

また、L*a*b*色空間は球形内にすべての色が収められ、球の中心部を黒(0)として色展開がなされている。また、表現される色(指定した色)は明度、彩度、色相の三属性で構成された座標の一点で表される。構成される座標軸は、上下方向に白-黒線、横方向に緑-赤線、およびそれに直交した黄-青線がある。上述した通り、この赤、緑、青、黄の4色は視覚四原色の1つの色であるが、対向する色は黄-青は補色関係にあるのに対して、緑-赤は補色ではないことに注意が必要である。

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[補遺]

・色差の概念

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色彩科学において、色差あるいは 色の距離は、2つの色の間に定義される指標の一つである。 従来は官能評価することしかできなかった「色の差」の概念が、定量的に検討できるようになった。重要な色の判定等において、これら特性の定量化は極めて重要である。通常はデバイス非依存の色空間におけるユークリッド距離で定義される。

色差の求め方は、2点間の距離で計算できる。つまり、各色の座標からピタゴラスの定理(三平方の定理)を使って求めることが出来る(計算例は省略)。

 

・マクアダムの楕円

CIEが定めた色を同定する方法に「マクアダムの楕円」がある(下図参照)。これは色度図上で表現される色が同じかほぼ同程度に見える範囲を示したものである。

よくある誤解で「色差は色そのもの表す」と考えている人を散見するがこれは明らかに間違いである。色差はあくまでも色が同じか似通っているかあるいはまったく違うかを表す指標なので色を同定することとは関係ない。また、CIEが定めたマクアダムの楕円は当初XYZ(xyY)色度図上(下図左側)で表現されいたが、この方法だと色差の範囲(楕円の大きさ)が一定せず不便であったが、その後UCS均等色度図(下図右側)に改良されどの位置でもほぼ同じ大きさの楕円で扱えるようになった。UCS色度図で注意すべき点は、xy軸ではなくuv軸になっていることである。

マクアダムの研究成果で最も有名なものは、色の制御技術分野である。マクアダムは、色差の知覚の基礎となるのは、ある色の知覚と見た目の色をマッチさせる際の統計的な誤差であるという仮定を確かめるため、一人の被験者による広範囲の実験を行った。その結果は1942年、CIE色度図上に統計的に派生させた楕円を形成させて表現されて発表された。しかし結果として、フリエレ-マクアダム-チッカーリング色差式が、その他の基礎研究により導き出された方式に比べると、知覚される色差の特定においてあまり効果的ではないことがわかった。マクアダムがこの楕円を同じ大きさの円に変換しようとする過程で、心理物理学的な色空間が非ユークリッド性を持つことがわかった。

ICS_画像表現_色差_マクアダム_楕円_1a
         図で左側はxy軸に対して、右側はuv軸であるということである

・色差値の評価

 色差値(dE)はNBS単位(米国標準局)で以下の通り定めている。

         dE*      色差の感覚

       0  ~0.5 Trace     かすかに感じられる

       0.5~1.5 Slight     わずかに感じられる

       1.5~3.0 Noticeable   かなり感じられる

       3.0~6.0 Appreceable  目だって感じられる

       6.0~12  Much      大きい

       12以上    Very Much   非常に大きい


デジタル画像処理のプロセス

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1 デジタル画像処理の概念

 デジタル画像処理がどのように実行されているかは、いろいろの方法があり1つの概念に統一できないが、概ね「図1」のようなプロセスで表現できる。

Step1:被写体を撮影したデータはカラーフィルタ(RGB or CMY)を介してCCDCMOS)に取り込まれ、RAWデータ(メタデータ)として記録される。

Step2RAWデータは文字通り生データ(未現像のフィルムと同じ)であり、通常は可視化できない状態になっている。(特殊なソフトを使えば可視化して、編集加工できる)

Step3:このままだとRAWデータは使用できないので市販の現像ソフト(レタッチソフト)でJPEGTIFFなどの可視化した画像データに置換される。

Step4:可視化した画像データは必要に応じて画像処理(変換、補正、加工、削除など)して画像エンジンで最終的に使用できるデータに仕上げる。(CMMエンジン、画像エンジン、色空間変換など)

Step5:こうして出来上がったデジタル画像データは、最終画像データとしてJPEGTIFFなどの画像データとしてメモリに保存される。この時、メタデータのRAWデータも保存しておくことが出来る。(できれば後々のことも考えてRAWデータは残すべきである)

 

<アナログ/デジタル変換の概念>

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2 デジタル処理のプロセス

 アナログ信号をデジタル信号に変換することは容易ではないが、アナログからデジタルデータへの変換(A/D変換)を行わないとデジタル画像処理は始まらない。

2に示すように、アナログ信号は連続的で波(Wave)のようになっているが、A/D変換すると離散的(飛び飛び)な値になる。逆に、D/A変換する場合は、離散的な分布の頂点同士を繋げるとアナログ信号になる。この時に要求されることはサンプリング周波数(標本化周波数)をどれだけ精度を上げたかによって、画像の品位が変化する。

実際にデジタル化するには、標本化、量子化、符号化、府古豪かという4つのプロセスが必要である。

標本化:連続信号を一定の間隔をおいて測定することにより、離散信号として収集することである。アナログ信号をデジタルデータとして扱う(デジタイズ)場合には、標本化と量子化が必要になる。標本化によって得られたそれぞれの値を標本値という。連続的な信号(アナログ信号)から、一定の時間間隔ごとにその瞬間における値を取り出すことで、サンプリングともいう。

量子化:ある物理量が量子の整数倍になること、あるいは整数倍にする処理のことである。

    コンピュータグラフィックスにおいて、色の量子化(color quantization)またはカラー画像の量子化(color image quantization)とは元の画像とできるだけ同じに見えるようにしつつ、画像内で使われる異なる色の数を減らす手法である。1970年代からビットマップ画像上で色の量子化を行うコンピュータアルゴリズムの研究が行われてきた。色の量子化はメモリの制限のために限られた色しか表示できないデバイス上で、多くの色を使って画像を表示するのに重要であり、効率的に画像を圧縮することができるようになっている。

符号化:エンコード(encode)ともいい、アナログ信号やデジタルデータに特定の方法で、後に元の(あるいは類似の)信号またはデータに戻せるような変換を加えることである。 一般的には、エンコードするための機器・回路・プログラムをエンコーダ、デコードするための機器・回路・プログラムをデコーダと呼んでいる。 特にコンピュータ(特にパーソナルコンピュータ)分野では、エンコードとは、音声や動画などをコーデックを用いて圧縮することを言う。一部では「エンコ」と略して呼ぶこともある。

複合化:デコード(decode)ともいい、エンコードの対義語として用いられる¥、エンコードした情報を元に戻すこと。復号する機能を「デコーダ」(decoder)という。情報の通信や記録を行う装置によっては、エンコーダとデコーダの両方を備える場合があり、このような双方向の変換機能あるいは変換装置、アルゴリズム等はコーデックと呼ばれる。

コンピュータでは、与えられた機械語を内部表現として解釈する事をデコードと呼び、その論理回路をデコーダと呼ぶ。デコーダを中心に、命令とデータを収集し、演算部に情報を送る機構全体はフロントエンドと呼ばれる。

[注]エンコードとデコードの方式に異なるものを用いると、符号が元に戻らない。その結果、本来のものとはまったく異なる意味不明の文字や記号の羅列が表示されることがある。これを文字化けという。例えば、Shift_JIS で記述されているWebページを、文字コードとして(Shift_JIS ではなく)Unicode を選択して読んだ場合、文字化けが起こる。

デジタル信号処理Digital Signal ProcessingDSPと略されることもある)とは、デジタル化された信号すなわちデジタル信号の信号処理のことである。分野としては、これとアナログ信号処理は信号処理の一部である。この分野の大きな研究・応用領域に音響信号処理、デジタル画像処理、音声処理の3つがある。

目的は実世界の連続的なアナログ信号を計測し、選別することである。その第一段階は一般にアナログ-デジタル変換回路を使って信号をアナログからデジタルに変換することである。また、最終的な出力は別のアナログ信号であることが多く、そこではデジタル-アナログ変換回路が使用される。処理可能な信号のサンプリングレートを稼ぐ目的に特化したプロセッサを使うことが多い。デジタルシグナルプロセッサという特化型のマイクロプロセッサが使われ、よくDSPと略される。

画像の表現方法(色空間の考え方)

 画像を表現するための前提条件は、モノクロやカラーを問わず色空間の設定(表現可能範囲)が最も重要である。つまり、階調数の限界や使用する色空間の色域などは画像処理する時点で予め決定しておかなければならない。

最も汎用的に使用されている色空間はCIE XYZ色度図で全世界共通の色域を表すものとしてとされている。これは基本的にXYZ色空間から一義的に派生されたもので、色空間表現の基本となっている。しかし実際に使用する段階では、明度が最も高い色空間を表現しており実用的ではない。従って、明度をパラメータとして変化させるためには三次元の色空間を設定しなければならない。また、sRGB表色系がデファクトスタンダードになっているが色度図に対して狭い範囲でしか色表現ができない。そこでRIMM/ROMM Wide RGBといった広域色空間が存在しているが(実際はこれが理想的な色空間なのだが)、これに対応するためにはそれ相当の知識と覚悟が必要となり、実際に使用している人は少ない。

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 そもそも色度図はどうして生まれたかを知る人は少ないようだが、XYZ表色系から絶対的な色合いを表現するためのxyY表色系CIE XYZ色度図)が考案された。

xyY表色系は、xyという色度とYという輝度を掛け合わせて三次元の色空間を創生したものである。言うまでもなく三次元座標上に規格化された値(1または100%のスケール)でX,Y,Zの点を与えた空間を指している。従って、全ての色はRGBそれぞれ256階調で表した色として表現できる。色度図はXYZ色度図のZ軸(輝度)方向から見た図で、結果的には釣鐘型(ヨットの帆型)の色空間が出来上がった。そのために輝度成分は潰れて一点に集中して輝度の表現が出来なくなった(輝度100%)。ここで注意すべきは、色度図を表示する場合、輝度がいくつであるかを明記しないと色度図として成り立たないことである。一般的にみて輝度を記述した色度図を見るのはごくまれであるが、L=80というように実際に適用される輝度レベルを書くことが肝要である。

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 上図に示したように、X,Y,Zはその成分が全色量(X+Y+Z)に対する成分の割合で示されているから最大値は1100%ということになる(これを規格化という)。

また、非常に大事なことは、X,Y,Zは目の刺激値を測定してその値を色成分としていることである。(XYZ色表現の原型=基本原理

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 濃度(明度の変化)256階調で表示されるが、0~255までどのようにして作るかというとベタ画像に明度成分を段階的に加減すればよい。つまり中間調を128とすればプラス法方向またはマイナス方向に1~128段階分1つずつ加えてやればよい。

また疑似的に作るならば、市松模様の割合を変化させて作れば0~255までの段階で変化させればよい。

因みに、RGBの各色が何故256階調となるかは、人間の眼の解像度によって決められる。(人間の眼は700~1000万色しか識別できないことからきている)

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 マンセル表色系は、米国の画家A.H.マンセルが考案した表色系である。色相H,明度V,彩度Cを数字と文字で表しHV/Cの形で各色を表示する。H10種の色相を表す文字(赤R,黄Y等)の前に各色相をさらに10等分した番号をつけ,Vは数字0(純黒)〜10(純白)で,Cは無彩色0からの隔たりを番号で示す(以前は10までであったが、現在は14が最大になっている)。例えば純粋な赤は5R4/14、ピンクは2.5R7/5である。

因みに、色相H、明度V、彩度Cの三属性を「色知覚の三属性」と定義づけている。

このマンセル表色系は、デザイン部門で多用されており色相に対応した色表現(明度と彩度の組み合わせ)が好んで用いられている。ファッション業界などではある色相を基準にした明度-彩度で表す色調*1でその中の1色を毎年流行色として決めて運用している。

*1:色調、またはカラートーン(Colour Toneとは、色の明度と彩度によって分けられる色の系統をいう。つまり、色調は明度と彩度が似ている色を集めてグループ化したもので、このトーンを理解すると色を使ったコミュニケーションを円滑に図ることができるようになる。

プリント印刷における画像形成とソフトプルーフ (その2)

引き続き、コニカミノルタの記事(「濃度計のツボ」)を掲載する(一部改変)。出典先URLhttps://www.konicaminolta.jp/instruments/knowledge/fluorescence_point/concentration/halftone_dot.html

<インクによる画像形成の仕組み>

同じ用紙に印刷(画像形成)しても、インクの違いによって仕上がりや見え方が異なる。

 インクはもともと染料インク顔料インク2種類がある。

・染料インク

染料インクでは、着色成分が水に溶解している。紙の繊維質の内部まで浸透するので、特にグラデーションなどの発色をキレイに表現することができる。

メリットは、繊細な色合いや発色を表現できることや色の再現性が高いことであり、

デメリットは、普通紙ではにじみやすいことや光や水に弱いことなどが挙げられる。

・顔料インク

顔料インクでは、着色成分が水に溶けきっていない状態で存在する(粒子状に分散)。顔料の粒子は比較的大きいので紙の表面に載り、内部までは浸透しない。くっきりとした鮮明な色が出やすく、着色力も強いという特徴がある。

メリットは、色がくっきりしていること、色が安定していること、光や水に強いこと、およびにじみにくいことなどが挙げられる。

デメリットは、繊細な色を表現しにくいことである。

従って、例えばインクジェットプリンタを選ぶとき、まず第一に考えるべきことは「染料インクを搭載したプリンタ」にするか「顔料インクを搭載したプリンタ」にするか、ということである。

どちらもインクをノズルから吐き出して用紙に付着させ像を描くという仕組みは同じであるが、染料プリンタは染料インクを用紙の表面に染み込ませるのに対し、顔料プリンタは顔料インクを用紙の表面に付着させている。インク特性(粒状や粒径)の違いによって、出来上がるプリントには次のような特徴が生まれる。 (下図参照、この図は典型的な例で、エプソン社が作成したのものを引用)

 

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図1 
染料インクと顔料インクの違い
以上のことをまとめるとインクによる画像形成の仕組みは、図2(下図参照)のように表現できる。

以下、筆者の文献の一部を掲載
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2 インク/用紙種の違いによる画像形成の概念

2に示すように、染料インクは溶液中に均等に拡散するのに対して、顔料インクは溶液中に粒状になってランダムに分散する。また、多孔質の用紙を使用する場合には、染料インクは奥まで染み込むが、顔料インクは孔の入り口で引掛かって表面に積み重なる。

また、用紙は一般的に「膨潤タイプ」「多孔質タイプ」及び「空隙タイプ」の3種に分類できるが、それぞれの長所と短所を勘案して、最も適する用紙を選ぶ必要がある。

 

<ソフトプルーフのプロセス>

ソフトプルーフとは、モニタプルーフともいい、図3に示すように、実際の印刷物を出さずに、モニタ上だけで校正作業を済ませてしまう方法のことを指す。この方法を適用すれば、時間の短縮や、配送の手間を省けるので、海外では広く使われている手法となっている。

近年、ソフトプルーフの必要性は日本でも叫ばれるようになり、校正のこれからのあるべき姿に、多くの人が期待を集めてきた。しかし、実際にはまだまだ進んでいるとは言い難く、これから本格的に普及させる段階であるのが実情である。

確かに広告業界や印刷業界ではカラーマネージメントの重要性を理解してきているが、トータルシステムとして捉えた場合、全体のコストの高さや、管理の難しさなどがネックとなってあまり採用されていないのではないかと考えられる。

しかしここにきて、JMPA(日本雑誌協会)に加盟する出版社が、20114月より雑誌広告の完全デジタル送稿を実施したことを機会に、今後多くの業界で普及していく機運が高まってきたことは喜ばしいことといえよう。

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3 ソフトプルーフのプロセス

プリント印刷における画像形成とソフトプルーフ (その1)

・反射濃度光学濃度ともいう)


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1 印刷による反射濃度の定義(計算方法)

反射濃度は、印画紙や紙上の記録画像を対象とした光学的な意味での濃度で、入射光に対する反射光の比率(主に網点面積率)として計測される。これは、ISO-5シリーズ等で規格化されている。

以下、コニカミノルタの記事(「濃度計のツボ」)を掲載する(一部改変)。出典先URLhttps://www.konicaminolta.jp/instruments/knowledge/fluorescence_point/concentration/halftone_dot.html

・網点面積率

網点面積率は、画像の中の網点部分が占める面積の割合を百分率で表したものである。ベタ部と網点部を測定して各々の濃度から計算する。用紙の特性を組み入れる係数(例:コート紙 n=1.65、非コート紙 n=2.70)が入ったユール・ニールセン式が厳密な計算で使用されるが、一般的にはよりシンプルなマーレイ・デービス式を使うことが多い。

網点をルーペで見た場合:

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調子再現

調子再現は、階調再現とも言うが、最も色の薄いところから最も色の濃いところまでどれだけ滑らかに再現しているかを表す。途中で不連続に濃さが変わる点がある場合、トーンジャンプ(画像の中に階調の連続性がなくなって、部分的に境界ができ縞模様が見えてしまう状態。とくに空や肌などの微妙なグラデーション部分で目立ちやすい)といって段のような濃度差ができるので好ましくない。カーブで表した場合、滑らかに変化する必要がある。

通常、パッチを測定して各濃度をプロットする。

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・網階調再現

網階調再現は、原稿の網%に対して実際に印刷されている網%で表す。通常、次に説明するドットゲインがあるため、真ん中がふくらんだ形状になる。各網%が滑らかにつながっているかどうかの指標で、グラデーションの図形でトーンジャンプの有無をチェックする。

各網点%のつながり具合と滑らかさを判断する:

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・ドットゲイン

ドットゲインは、データより網点が太ることである。(印鑑に朱肉を付けて押印した時にはみ出し部分が出るのと同じ現象)この現象には、印刷機上でインクがつぶれて網点が太る物理的ドットゲインと、目視または測定時に用紙中で光が散乱して生じる光学的ドットゲインの2つがある。

通常、50%部分のドットゲインで表現することが多く、一般的に波10から20%太る。

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物理的ドットゲインと光学的ドットゲインがあり、両方を含んだ数値となる。また、JapanColor2011の基準値は14±3%以内となっている。

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各網%のドットゲイン量を測定し、プロットする:

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良い印刷かどうか調べる時に、ひとつの指標としてドットゲインカーブを作成する。

0から100%まで10%程度の刻みで各%のドットゲインを計算し 、図のようなカーブを作成する。理想は左右対称できれいな形になることであるが、実際はいろいろな要因で、ある程度凸凹したりライト側が少し上がったりすることがある。

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トラッピング

トラッピングは、色の上に別の色を刷り重ねる時、後の色がどれだけ乗るかを表す指標で、刷り順は通常「KCMY」です。1色のみを刷る場合に比べ他のインクの上に刷る場合は、上に乗るインクは通常60から80%程度に減る。

トラッピング率として「%」の数字で表すが、大きいほど良い印刷である。算出にはプルーナーの式もあるが、一般的にはプルーセルの式が使われる。

因みに、M+Y65%、C+Y75%、C+M63 以上が標準である。

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蛍光分光濃度計「FD-7/FD-5」は、ブルーナーの計算式に切り替えることができる。

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ギャラリー
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