アンディマンのテクノロジー(援技力)

写真表現に関わる専門的な知識を補うために設けたブログです。 新たらしい時代に相応しい技術情報を掲載していきます。 普段疑問に思った問題の解決に繋げるテーマを醸成していきます。

2018年10月

画像を創生する


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 画像はどのようにして形成されるかという概念は、ベテランの写真家(指導的立場の人や大学などの教育者を含む)でもよく理解していないように見受けられる。また、時にはカリスマ的存在のインストラクタが説明する中で独自の主張(根拠がない、理論的でない、あるいは間違いや誤解)をしていることさえある。
 画像形成のプロセスは、
被写体→光学系(特にレンズ、色フィルタ、画像素子)→画像処理回路(色変換、色補正、レンダリングインテント=画像エンジンで処理)→モニタ(画像表示)→プリンタ(印刷)
である。
 図に示す通り、被写体を撮影した画像は、色フィルタを介してRGBの3つのチャンネルに分版される。これがメタデータの画像となる。この時のデータは各色の濃度レベルに合わせて0~255の段階に割り当てられる。
通常は、その値を基にLUT(LookUp Table)から最適値を選び最終的にプリントするインクの色に合わせた値に変換される。この時、非常に大事なことは、色の調和、特に全体の配色がバランスの取れたものになっているかどうかである。それを解決する手段として「色調和システム」を利用すると良い。
 実は、センスのある写真家やデザイナーは、色補正の段階で自分のセンスでやってのけているのでいちいちこのシステムを使わないで済むのである。
忘れてはならないことは、例えば「写真を撮る」となると好みのアングルで撮ってしまうが、露光量は勿論のことホワイトバランスや構図などをあまり気にしていなのである。だから、それらの画像要因を意識しなければならない、ということである。また、写真はよく「光と影」と言われるがその光をコントールすれば色はある程度恣意的に創れるということを常に念頭に置くことである。前に説明した立体色度図(あのコーン型をした図)を思い出して、どの明度ならどんな色が出せるかを考えると分かりやすい。



デジタル画像と色再現の仕組み

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図1 デジタル画像形成
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図2 色再現の方法(例)

 図1は原画像を撮影して、画像処理を行うまでのプロセスを示したものである。
大方のイメージクリエイターは、このプロセスが実際にどのように処理されているかを知らないままでいる。特別に知っていたからどうのこうのと言う積りはないが、このことを知っておくことはとても大切であると考えている。
一応説明すると、被写体(原画像)をデジタルカメラで撮影すると、光学系~カラーフィルタ(RGB or CMY)を通して固体撮像素子(CCD or CMOS)に送られそこで一旦画像データとして保存され、ビデオボードなどの画像処理デバイスに転送され、それを介してデジタル画像として抽出・保存される。この段階では完全にデジタル化された画像データ(数値データ)として3色画像に分版され(このケースではRGBの3チャンネル)、2値化データとして1~256色(0~255)に割り当てられる。この時に重要となることは、原画をアナログからデジタルに変換する際にサンプリング周波数が問題になる。(要するに原画像を縦横二次元でどれだけ細かく分割するかということ)
これは画像エンジンを開発する段階で決まってしまうので、ユーザーサイドではコントロールできないが、このサンプリング周波数が画質の決め手になることを知っておくことが必要である(周波数高いほどきめの細かい画像が得られる。しかし過大に周波数を上げても意味がない。人間の分解能力を越してまで上げないことである)。
つまり、自分が今撮影しようとする画像はどんな仕様のデジタルカメラを使うかを決める必要がある。

 図2は、色再現するテクニックの一例である。色再現方法は市販のソフトを使ったり、チャートを使って色補正(色調整)など山ほど存在するが、自分に合った環境つくりが、費用対効果を見極めながら行われることが重要である。画像処理ソフトや測定機器、チャートなどフル装備するとなると非常に高価なものになり誰でも揃えられるという状況にないのが現状だから、自分に見合った環境整備(妥協しながらも満足できるレベル)が必要となる。
この図は、オリジナルチャート(マクベスチャート)を使った例を説明するが、チャートを使った色再現は意外と簡単でしかも忠実度の高い画像が得られる(理由:人間の眼は数値化に弱いが微妙な色の違いには敏感であるからである)。実際の色再現は、まずオリジナルとしてマクベスチャートを使ってみる。その出力画像を見て各色の色合いを出来るだけ近似色になるように合わせ込む。この時注意すべき点は、合わせ込む色は中間調であり、決して原色(RGBやCMY)ではないことである(原色は自然界に存在する確率が低いから)。
こうして合わせ込んだ状態で、新たな被写体を撮影して、出力画像と比較して「恣意的な色再現」がなされているかどうかを判断する。チャートの補正も同様だが、画像補正はヒストグラムとガンマチャートによって補正すると分かりやすい。
兎に角、何度も述べるがコンテンツ(作品)は「恣意的な色再現」が絶対だから顧客要望を満たしながら恣意的な色を創生することが最大の目的となることを忘れてはならない。

画像形成の仕組み

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 デジタルカメラで画像を取り込むと、その画像は固体撮像素子(CCDやCMOS)に映し出される。(上図上側に表示)その際、固体撮像素子と光学系(レンズ群)との間にはカラーフィルタ(原色と補色の2種類)があり、例えばRGB系であればRGBの3チャンネルに色分解が成され、それぞれのフィルタを通過した物体の色が各色ごとに取り込まれてチャンネルを構成する。
ここまでは、だれでもある程度のメカニズムを知っているはずであるが、その先どのようにして画像や文字などが形成されるのかを知る人は少ない。実際には各社の思考で色々なアルゴリズムが開発されているが(秘密裡にされているのでその詳細は分からないが)おおよその考え方は上図下側(3コマで表示)に示した通りである。
つまり、RGBの3チャンネル(3版)に分離(分版)した画像データから、例えば、Gチャンネルに注目すると中央に示した通りの情報が取り込まれている。これだけ見ると何が何だとサッパリ理解できないので、検出していない領域(黒い画素の部分)を画像補間することになる。ここでは、縦、横、斜めの画素が黒い画素部分を介して連続しているいる場合はその部分が同色になっているというルールを設ける。すると、このルールに従って未検出部分の色を補間してゆくと、右図のようになって文字として読めるようになる(この場合は、「円」という文字が得られる)。実施はこんなに簡単なアルゴリズムではないが、各社特有のアルゴリズムを開発して、画素間の補間を丁寧に実施して画像形成を行っている。

理想的な色創り

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 この図は入力から出力に至る画像データの流れと色伝達手段を表したもである。
つまり、入力における画像はメタデータとしてあらゆる色情報や形状情報を含んでいる。イメージクリエータにとって重要なことは、メタデータを色空間変換したり、画像編集(レタッチ)したり、違う形に加工したりするがこのプロセスにおいていかにして元のデータ(色や形状)を損なわず、最終目的地点のデバイスに伝達するかにある。(時によってはデザイン上、原画と全く違う色や形状にすることがあるが、ここではそれを無視して述べる)
 一連のプロセスを簡単に述べると、入力系(カメラやスキャナなど)で得られたメタデータを共通な色空間(CIE XYZやCIE L*a*b*など)に展開する。それをモニタで確認して色の微調整やゴミ取り、画像加工などを施して恣意的な画像に仕上げる。その画像を最終的に出力系(プリンタや印刷機)のデバイスに出力させる。
この時問題になるのが、入力画像と出力画像の色が一致しないことである。この原因の最も大きなものは、例えばプリンタに出力すると仮定すると色空間(色域)の違いが挙げられる。つまりRGBからCMYに色空間を変換することになるから当然出力先にない色(狭い色空間のため)が発生するために色目の違いが顕著に表れる。これを防止するためにレンダリングインテント(描画意図)によって好みの色感に補正している。しかしこれでもスッキリとしない場合がある。その理由は、これまでの画像補正(カラーマネージメントシステムによる)は測色的なものであり、視覚的な補正を行っていないことである。いくら優れた精度を持つ測定器で仮に誤差無し(ありえないけど)に測ったとしてもそれだけで色の一致性は得られない。ましてやレンダリングインテントによって再近似色にしているのでなおさらである。そこで視覚的な要因を加えることになるが、残念ながら現実のプロセスに適用できる「視覚的色補正」の仕組みは確立していない。理想論を言えば、上図に示したように「視覚的色情報」の変換メカニズムを確立すればよい。(勿論、色々なアプローチがあるので、これが絶対的な解であるとは言い切れないのだが・・・)
 現実的には、脳科学の応用で錯視・錯覚やだまし絵的な要素の排除やデザイン的なテクニックを使ってそれらの不都合さをカバーしている。
少なくとも、プロと呼ばれるクリエータはこのことを十分にわきまえて行動することが大切で、普段から活性化できる要素を取り入れるよう努力することを切望する。

ギャラリー
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