前回、「グレースケールの制御」関連する記事を掲載しましたが、今回は写真家にはあまり馴染みがないかもしれないけれど、フィルムの特性曲線を用いて濃度の特性曲線に対して補足をします。(デジタルではこのような概念の記述はないので、とても重要で貴重な技術を分かり易くするためにフィルムの概念を用いて説明しますので、悪しからず了承して頂きたい) 出典先:コダック社 「色域の謎」
これまで述べた通り、光のスペクトルはJISでは380nm~780nmの範囲が可視光と定められている。
フィルム時代にはカラーフィルムの感光層に被写体のカラー情報(映像)を投影していた。まず、映像が入力されるとフィルムを現像する前は「赤、緑、青」の「光の三原色」に分版されそれぞれの感色層に記録される。次に現像を行うと感色層は陰陽反転し補色である「シアン、マゼンタ、イエロー(CMY)」の「色の三原色」に分版される。
これがいわゆる「ネガ」となり画像形成を行い、最終的には印画紙に焼き付けしてカラー画像を形成する。
・フィルムにおける分光濃度(特性曲線)
特性曲線とは、フィルムの露光量とそれに対応する現像処理後の濃度の関係を図で示したものである。曲線の形成濃度値は、厳しくコントロールされたセンシトメーターで露光され、同様に現像処理までされたテスト用のフィルム片から測定される。ある特定の用途で、特殊な光源に対する乳剤の反応の正確な情報を必要とする場合、(例えばナトリウム灯で照明された駐車場で撮影する場合)フィルムが実際に露光される光源をシミュレートするため、センシトメーターで露光する時にフィルタを使って、照射光を調節することができる。また、露光量をコントロールするため、定量的に変化する中性灰色濃度のステップをもった、ガラス乾板またはフィルムでできた特殊なステップタブレットが、テスト用フィルム片の表面に置かれ、一定の露光時間で露光される。結果として、テストフィルム上に現われる濃度の範囲は、被写体が照明の広い範囲にわたって光を変調し、それによってフィルム上に露光の範囲(それぞれ違う濃度)を形成するといった、ほとんどの撮影条件をシミュレートするわけである。
現像処理後、テストフィルムに現われた段階濃度は、濃度計で測定される。テストフィルム上のそれぞれのステップが受けた露光量 (ルクスで測定)に露光時間(秒で測定)をかけて、露出値をルクス-秒の単位で算出する。 露光値 (log H) の対数(基数10 )をグラフの水平軸に、それに対応する濃度を縦軸にとって、特性曲線を形成する。この曲線は、センシトメトリー曲線、D Log H (またはE )曲線、H&D (ハーターとドリフィールド)曲線などとも呼ばれている。
図1では、ルクス-秒の値は露光量の対数値の下に示されている。濃度値の左側には、それに相当する透過率と不透過率の値が示されている。
・典型的な特性曲線
図1は、前述の説明のとおりに露光され、現像されたテストフィルムの特性曲線で、ある特定の方法で現像されたある特定の種類のフィルムの絶対、または 実際 の特性曲線である。
時には、1つの濃度計による測定値と、別の濃度計による測定値を同じにしなければならないことがある。これにはステータス濃度測定法が使われている。ステータス濃度とは、フィルタなし の分光レスポンスに適合した濃度計の測定値のことである。(出典:ドウソン、ボウグルソン著 「カラー濃度測定法のレスポンス機能」) 一組の入念に組み合わされたフィルタがこのような濃度計に使用された場合、ステータスA 濃度測定法という言葉が使われている。カラーポジの感材(リバーサル、デュープリケート、プリント)の濃度は、ステータスA 濃度測定法で測定されますが、これとは違った組み合わせのフィルタが濃度計内部に組み込まれている場合、ステータスM 濃度測定法という言葉が使われている。カラープリプリントフィルム(カラーネガ、インターネガ、インターメディエイト、低コントラストリバーサルオリジナル、リバーサルインターメディエイト)の濃度は、このステータスM 濃度測定法で測定されます。(DAK 濃度計フィルターセットは、濃度計の製造元から直接購入することができる。より詳細な情報は各々の濃度計の製造元にお問い合わせして頂きたい。)
濃度は、主として写真の世界でいわゆる”濃さ”をあらわすのに用いられる尺度で、ネガやプリントのある部分の濃さを、例えば0.3、0.4といったように表す。写真に写し込んでネガやポジの調子を検討するのに用いられるグレースケール(写真=コダック製)には各段階に数値がついているが、これも濃度の値(この場合は反射濃度)である。この濃度(D:Density)は簡単にいえば、透過率または反射率の逆数の常用対数値である。
濃度は、表を見ればわかるように、透過(反射)率10%が濃度では1、1%が濃度2、0.1%が濃度3となり、そして0.3で約50%、0.6で約25%、0.9で約12.5%といったように、0.3ごとに透過率(または反射率)が半減する関係にある。
白黒フィルムは普通1つの特性曲線しか持っていない(図4と図5を参照)。 一方、カラーフィルムはそれぞれ赤感(シアン色素)層、緑感(マゼンタ色素)層、そして青感(イエロー色素)層の3つの特性曲線を持っている(図6と図7を参照)。 リバーサルフィルムは現像処理後に陽画を形成するので、それらの特性曲線は、ネガフィルムとは逆の形になる(図5と図6を比較)。
・典型的な特性曲線
実際、撮影監督は、プリンターライトによってプリント濃度を増減することで、観客がどこまで見えるかをコントロールすることが出来る、写真化学系で変わっているのは、プリントフィルムの感度特性曲線がネガの曲線の反転した形になっているという点で、肩部にはハイライトではなく暗部が収まっている。この二曲線の関係を視覚化するには、プリントカーブにネガカーブを乗せて、プリントカーブを90度回してみる(これをジョーンズ図表といい、発明者ロイド・ジョーンズを記念する) 露光の時プリンターライトを、例えばGを+3ポイント調整することによって、ネガのカーブはlog露光量の+3x0.025倍だけプリントカーブに沿って平行移動し、プリントフィルムに当たる光を変調する。プリントフィルムのカーブはそのままである。ネガの垂直の濃度軸はプリントの水平のlog露光軸に割付けられる。 これはプリンターライトの変化は定量化が可能なため、再現性があるからである。

あるカメラネガのセンシトメトリー第3象限(右下)に示されている。例として、カメラ
露出を1絞り増やすと、白、グレー、シャドウが0.3だけ右へ移動する。第2象限(左上)にはプリントのセンシトメトリー。第4象限(左下)にはネガ濃度をプリントフィルム露光にマッピング(ラボでプリント)したもの。タイミングライトを調製すると、45°のカーブ
が大きく左右にシフトする。第1象限(右上)は、システムの総合階調再現(あるシーンの
露光から得られたプリントの濃度)を示す。
本誌1931年6月号に、新しい天然色映画プロセスが英国の最高の科学団体、ロンドン王立協会で提示されたという一段落の広告が載っているが、この協会はジェイムズ・マックスウェルが最初のカラー写真を見せたのと同じ団体である。この映画プロセスは、1インチに50万個の極小R,G,B正方形から成るマトリックスを埋め込んだ、フィルムベースを使用(レンチキラー法)している、それより40年前の「モザイク(pixellated)」 概念と同様なもののようだ。