アンディマンのテクノロジー(援技力)

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数学的な美 その3

出典:オープン百科事典Wikipedia

結論の美

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  結論の美の例: 複素平面において、e0 = 1 を出発点として時間 π に対応する距離を速度 i で移動して 1 を加算すると、0 に到達する。

 何人かの数学者は数学的な結論において、一見無関係な印象を受ける二つの異なる数学分野を繋ぐ美を見出している。 そのような結果はしばしば深遠な洞察によるものと表現される。

 ある結果が深遠な洞察によるものかどうかということについて普遍の同意を得ることは難しいが、いくつかの例がしばしば引用される。そのひとつはオイラーの等式、

  eiπ1=0

であり、一見無関係であると思われていたネイピア数 (自然対数の底) e, 虚数単位 i, 円周率 π の間に乗法単位元の 1 と乗法零元 (加法単位元) 0 のみを用いた単純な関係を与えた。アメリカの物理学者リチャード・ファインマンはこの等式を「数学において最も特筆すべき式」(The most remarkable formula in mathematics) と称した。

 現代的な例では、楕円曲線とモジュラー形式の間の重要な関連性に関する谷山豊と志村五郎によるモジュラー性定理、すなわち谷山・志村の定理があげられる。 谷山・志村の定理を用いたフェルマー予想の解決に関する業績はアンドリュー・ワイルズとロバート・ラングランズにウルフ賞数学部門の受賞をもたらした。 また、モンスター群 (en) をモジュラー関数に弦理論を通して結びつけるモンスタームーンシャイン はリチャード・ボーチャーズにフィールズ賞をもたらした。

  ここでの深遠という言葉の対義語として自明を使用する。 自明な方法は、他の既知の結果から明白あるいは簡単な方法で演繹できるような結果であるかも知れないし、空集合のように特定の対象の特定の集合にだけ適用できるものかも知れない。 しかしながらしばしば、定理の記述の文章は、その証明がかなり明白であっても深い洞察をするのに十分に独自的であるかも知れない。

 イギリスの数学者ゴッドフレイ・ハロルド・ハーディは彼の随筆であるある数学者の生涯と弁明で、数学的な美は驚愕の一要素から生じると示唆している。それに対してアメリカの数学者・哲学者であるジャン=カルロ・ロタ (en) は同意せず、次のような反例を提示している。

「数学の偉大な多くの定理はそれが最初に出版されたときに驚愕される。従って例えば20年余り前 (1977年当時) の、高次元の超球におけるエキゾチック球面 (異種球面、en) の存在の証明は驚愕すべきものと考えられたが、現在ではその結論が美しいとは誰にも言わせるものではない。」

 それに対してはおそらく皮肉にも、Michael Monastyrskyは次のように記している。

7次元超球における異なる微分構造に関するジョン・ウィラード・ミルナーの美しい構成についてはそれ以前では類似の発見を探すことは大変に困難であり、... ミルナーのオリジナルの証明はそれほど構成的ではないが、後にE. ブリスコーンはそのような微分構造は究極的に明示的で美しい形で記述できることを示した。」

  この反対意見は数学的な美しさの主観的な要素とその数学的な結論の関連性の両方、すなわちこの場合はエキゾチック球面の存在性のみではなくそれらの具体的な実現手段をも表現している。

 

経験の美

 数と記号の操作から生じるある種の歓喜は、あらゆる数学の研究のために必要なものである。 科学哲学でそうであったように、科学や工学に数学が道具として与えられると、他に例がなくとも技術化社会は美学を積極的に培うだろう。

 大半の数学者での数学的な美の顕著な経験は、能動的な数学の研究活動からもたらされる。受動的な方法で数学の喜びを楽しむことは大変に難しく、特に数学では、見物人、視聴者、傍観者の立場ではそのような経験をすることはないだろうとされている。バートランド・ラッセルはこのことを数学の厳しい美と称している。

 

美からの再発見

 数学的な美は、その美という結果のみで評することはできない。 数学的な美を追求することは新たなる事実の発見の切っ掛けとなることは珍しいことではない。 物理学者ポール・ディラックは科学者のとるべき行動についてこう述べている。

「数学的な美を持つ理論は実験的データに適合する見苦しい理論よりももっと確からしい。神は最高次の数学者であり、森羅万象を創造するために非常に高度な数学を用いた。」

 つまり、このような二者択一を迫られたときには数学的な美を持つ理論を選択せよ、さすればそれは神が創造した真理に近づき、新たな真理の発見に繋がる、という訓示である。

 

数学的な美 その2

出典:オープン百科事典Wikipedia

解法の美・手法の美 

数学者は数学の証明方法において特に華麗さを評価する。 これは次のような文脈に依存する意味を持つだろう。

最小限の既知事実や付加的仮定を使用した証明

異常に簡潔な証明

驚愕的な方法により結論を演繹する証明 (例えば、一見無関係な既知定理を用いた証明)

新しい独自の洞察に基づく証明

類似の問題群を解くための一般化が可能な証明方法

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解法の美:多数の手段の中の美の発見

 華麗な証明を模索する中で、数学者はしばしばある結論を証明するための複数の独立な方法に出会うが、最初に発見された証明方法が常に最良とは限らない。 おそらく最も多数の証明方法が知られている問題の典型例は三平方の定理であり、これまでに数百もの証明が公表されている。 解法の美は、この定理の証明にもいくつか見られる。 右の図によれば、もはや文章や数式などを付与する必要は全くなく、図のみからその定理の成立がわかる。 簡潔であるとともに説明の必要無しに直感的な理解を形成する典型例であり、上で列挙した五つの華麗さのうち少なくとも最初の四つを具備する。 非常に多くの証明方法が見つかっている他の例として平方剰余の相互法則を挙げることができ、カール・フリードリヒ・ガウスによりこの定理に対して8個の異なる証明が公表された。

 逆に、論理的に正しいが膨大な計算量を要するような結果、念入りすぎる方法、大変に平凡なアプローチ、あるいは非常に強力な定理や既知の結果を多数使用する証明方法は通常は華麗とは看做されないし、醜悪とか不器用と評価されるかも知れない。

 

手法の美:モデルの美しさ

 数学を道具として利用した中での手法の美のひとつとしてヨハネス・ケプラーの多面体太陽系モデル仮説があげられよう。 ケプラーの時代には太陽系の惑星として水星・金星・地球・火星・木星・土星の6個しか知られていなかった。 ケプラーは正多面体が5種類しかないことと、6個の惑星の軌道による5個の隙間には、正多面体と球との外接・内接による関連性があるとの仮説を立てた。 結果的にはこの仮説は彼の期待を裏切ることとなったが、後の古典力学の発展に繋がった。

 

数学的な美 その1

本シリーズは7回にわたって「数学的な美」について掲載します。

 

美の概念

 出典:オープン百科事典Wikipedia

 

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 数学的な美(mathematical beauty)とは、数学に関する審美的・美学的な意識・意義・側面を様々な観点から取り上げる概念である。 数学的な美 (mathematical beauty) と数学の美 (beauty in mathematics) はしばしば同義に扱われるかもしれないが、後者が数学そのものの審美性の概念であるのに対して前者は数学を含む全ての事象の数学的側面に注目し、かつ後者を包含しうることがそれらの違いである。従って本文では前者の意味に基づいて論じる。

 多くの数学者は彼らの仕事、一般的には数学そのものから美学的な喜びを覚えている。 彼らは数学(あるいは少なくとも数学のある種の側面)を美として記述することにより、この喜びを表現している。 数学者は芸術の一形態あるいは少なくとも創造的な行動として数学を表現している。 このことはしばしば音楽や詩を対照として比較される。 数学者バートランド・ラッセルは数学的な美に関する彼の印象を次のように表現した。

 それを正しく考察された数学にあるものは真実のみではない。そこには至高の美、すなわち、彫刻が持つような冷淡で厳粛な美、人間の弱い性質が惹き付けられることなく、絵画や音楽の華麗な罠なしに、依然として崇高で純粋な、そして偉大な芸術のみが見せることができる強固な完成度の有能性を備えている。真の歓喜の精神は、高揚、人類以上のものであるという感覚、最も卓越した優越性の試金石であり、詩がそうであるように確実に数学において見つかるものだ。

  ハンガリーの数学者ポール・エルデシュは数学の言語での表現不可能性(英語版)に関する彼の見解を次のような言葉で表現した。

「数は何故美しいのか。それはベートーベンの交響曲第九番がなぜ美しいのかと訊ねるようなものだ。君がその答を知らないのであれば、他の誰も答えることはできない。私は数が美しいということを知っている。もし数が美しくないのなら、美しいものなど何も無い。」

 

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