アンディマンのテクノロジー(援技力)

写真表現に関わる専門的な知識を補うために設けたブログです。 新たらしい時代に相応しい技術情報を掲載していきます。 普段疑問に思った問題の解決に繋げるテーマを醸成していきます。

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光と色の基礎知識 No.36(最終回)

2.8.5 色空間の構造体

 色空間(color spaceは、立方的に記述される色の空間である。カラースペースともいう。色を秩序立てて配列する形式であり、色を座標で指示できる。色の構成方法は多様であり、色の見え方には観察者同士の差異もあることから、色を定量的に表すには、幾つかの規約を設けることが要請される。また、色空間が表現できる色の範囲を色域という。色空間は3種類か4種類の数値を組み合わせることが多い。色空間が数値による場合、その変数はチャンネルと呼ばれる。

色空間の形状はその種類に応じ、円柱や円錐、多角錐、球などの幾何形体として説明され、多様である。

色を指定するにはColor構造体を使っている。標準の色は、Color構造体や、SystemColorsクラスのプロパティに定義されている。任意の色を指定するときに、このクラスを利用する。

Fig1_2_8_6

 色域(gamut, color gamutは、コンピュータグラフィックスや写真などでの色のサブセットである。特定の色空間や特定の出力機器など、与えられた状況で正確に表現できる色のサブセットを指すことが多い。また、特定の画像に使われている色の完全なセットを指すこともある。この場合、写真をデジタイズし、デジタイズした画像を別の色空間に変換したり、固有の色域を持つ出力機器を使って出力したりすると、オリジナルの持っていた色はその過程で失われることがある。

・色域の表現

Fig1_2_8_7色域は右図左側で示すようにCIE 1931 色度ダイアグラム内の領域として表現することが多く、曲線の境界線は単色を表している。一般に色の再現には三原色を使うことが多いので、色域は三角形の領域となっていることが多い。

しかし、実際の色域は明るさも関係する。そのため完全な色域は、右図右側のように3次元空間で表現しなければならない。

-物体表面

20世紀初めごろ、色を制御可能な形で記述する方法が産業界で必要とされるようになり、光のスペクトルの測定が可能となったことで色を数学的に表現する研究が行われるようになった。ドイツの化学者ヴィルヘルム・オストヴァルトは最適色 (optimal colors) の考え方を提唱した。エルビン・シュレーディンガー1919年の論文 Theorie der Pigmente von größter Leuchtkraft(高輝度顔料について)で、最も飽和した色は可視スペクトル上のゼロまたは完全な反射がもたらす刺激によって生成されるとした(つまり、反射スペクトルはゼロと100%の間で高々2回遷移する必要がある)。したがって、2種類の最適色スペクトルが考えられる。右の図にあるようにスペクトルの両端はゼロで途中に1になる部分がある場合と、一方の端では1でもう一方の端でゼロとなる場合である。前者はスペクトル色のような色となり、CIE xy 色度ダイアグラムにおける馬蹄形部分に大まかに対応する。後者は同じダイアグラムの直線部分に近い色となり、だいたいマゼンタ系の色になる。シュレーディンガーの業績は David MacAdam Siegfried Rösch が受け継ぎ、さらに発展させた。MacAdamは、世界で初めて CIE 1931 色空間に明るさを Y = 10 から 95 まで10単位で設定し、最適色の立体の正確な位置を計算した。これにより、実用的な精度で最適色の立体を描けるようになった。この業績により、最適色立体の境界線を MacAdam limit と呼ぶようになった。今日では、効率的アルゴリズムで実用的な時間内(最近のコンピュータでは1時間程度)に高精度に境界を計算できる(明るさのレベル毎に数百ポイント。MacAdamは明るさレベル毎に12ポイントを計算)。MacAdam limit は最も飽和した(最適な)色が対応する境界線であり、黄色以外の単色に近い色は輝度が低いところにあることを示していた。黄色の輝度が高いのは、スペクトルの赤から緑までの長い部分を1とすることで単色の黄色に非常に近い色になるためである。

-光源

加法混合による表現では明るさを表すために光源が必須であり、一般に単色に近くないものが使われる。すなわち、多くの光源の色域は純粋な単色(単波長)の光を作り出すことが難しいため、このようになっていると理解できる。技術的に最良の(ほぼ)単色の光源はレーザーだが、高価であり多くの場合現実的でない(ただし、レーザー技術の進歩によって低価格化が進んでおり、色再現の光源としても利用が始まっている)。レーザー以外では、多くのシステムは多少大ざっぱな近似で高飽和色を表現しており、必要な色以外の波長の光も含んでいる。これは一部の色相で顕著に現れることがある。

加法混合を使うシステムでは、色域はおおよそ色相飽和平面内の凸多角形となる。この多角形の頂点がシステムが生成できる最も飽和した色である。減法混合の場合、色域はもっと不規則な形になる。

・補間方法

目標値(または指令値)は、通常は離散的で不連続な点で与えられるため、点と点の間を結ぶよう補間する必要がある。この連続する離散点を補間する方法として、Bスプライン曲線(B-splineを用いたBスプライン補間がある。

また、同様の補間方法としてベジエ曲線(Bézier Curve、ベジェ曲線ともいうを用いたベジエ補間によるスムーズな軌跡を生成する手法もある。

Bスプライン曲線(またはB-スプライン曲線)は、離散的な指令値(制御点)についてノットベクトルを用いて定義される滑らかな曲線である。

Fig1_2_8_8
このBスプライン曲線は、コンピュータグラフィックスのエリアで広く用いられている。

特徴としては、

-制御点の一部を変更しても全体に影響が及ばない

-生成された曲線は必ずしも制御点を通るわけではない

-曲率が連続である

という点があります。

B-スプライン(B-spline)の”B””Basis”の略である。

また、ここでいう補間とは、近似色の設定画像で、隣り合うドットの色の数値が極端に違う場合、全体の傾向から推測して、近似する色を補うことで、スキャナーやデジタルカメラなどで用いられる技術をいい、グラフを作成する機能のひとつでもある。グラフのもととなるデータが欠けている際、その前後のデータから欠けているデータの値を推測し、自動的に補う。折れ線グラフやレーダーチャートなどで利用できる。

Fig1_2_8_9

ベジエ曲線を用いることで、離散的な点を滑らかに補間することができる。このベジエ曲線は、Bスプライン曲線の特殊なケースである。このベジエ曲線は、Bスプライン曲線と同様にコンピュータグラフィックスのエリアで広く用いられている。

特徴としては、

-始点と終点を必ず通る

-その他の制御点は基本的には通らない

-曲率を制御し易い

という点がある。また、このベジエ曲線はBスプライン曲線のパラメーターを制限すると作成することが出来るため、ベジエ曲線はBスプライン曲線の特殊な場合という関係性がある。

このように、ベジエ曲線は、N個の離散的な指令点から得られるN-1次の滑らかな曲線といえる。滑らかな曲線を容易に描くことが可能なため、コンピュータグラフィックス分野で広く用いられている。このベジエ曲線は、Bスプライン曲線のパラメーターを制限することで作成が出来るため、ベジエ曲線はBスプライン曲線の特殊な場合という関係性がある。



「お知らせ」
このブログを閲覧して頂き誠にありがとうございます。
このブログは、自己啓発を込めてまとめたものを掲載してきましたが、一身上の都合があって今回が最終回となります。
次回以降は予定しておりませんが、筆者のホームページ「http://advantec.client.jp」より別の形で掲載してありますので、興味があれば、引き続き閲覧して頂きますようお願いします。

長い間お付き合い頂きましたことに対して、心より感謝申し上げます。

光と色の基礎知識 No.35

2.8.3 HSV

HSVはコンピュータで絵を書く場合や、色見本として使われる。これは、色を色相(色味)と彩度という観点から考える場合、加法混色や減法混色よりも自然だからである。HSVには色相 (hue)、彩度 (saturation value)、明度 (value) が含まれている。HSBとも呼ばれる。

 HSVモデル(HSV model)は、色相(Hue)、彩度(SaturationChroma)、明度(BrightnessLightnessValue)の三つの成分からなる色空間である。HSB色空間(HueSaturationBrightness)とも、HSV色空間(HueSaturationValue)ともいわれる。

色相の種類(赤、青、黄色のような)。0360の範囲(アプリケーションによっては0100%に正規化されることもある)。

彩度 - 色の鮮やかさ。0100%の範囲。刺激純度とcolorimeric purityの色彩的な量と比較して「純度」などともいう。色の彩度の低下につれて、灰色さが顕著になり、くすんだ色が現れ、また彩度の逆として「desaturation」を定義すると有益である。

明度 - 色の明るさ。0100%の範囲。

HSV1978年にアルヴィ・レイ・スミス(Alvy Ray Smith)によって考案された。これはRGB色空間の非線形変換であり、色の変換に用いられることもある。HSVHSBは同一であるがHLSとは異なることに注意すること。

HSVの視覚化

HSVモデルは通例コンピュータグラフィックスアプリケーションに用いられる。いろいろなアプリケーションでユーザは個々のグラフィックス要素に適用する色を選択する必要がある。このような場合、HSV色環がよく用いられる。これは円状の領域に色相が表現されたもので、それとは別に三角形の領域が彩度と明度の表現に用いられることがある。一般的に、三角形の垂直軸は彩度を指示し、また水平軸は明度に対応する。この場合、色は最初の操作で環状の領域から色相を選択することができ、それから三角形の領域から所望の彩度と明度を選択する。

HSVモデルの別の視覚化方法は円錐である。この表現では、色相は色環の三次元円錐状の構造に描かれる。彩度はその円錐の円形交差部分の中央からの距離、明度は円錐の頂点からの距離で表される。円錐ではなく六角形の錐体(六角錐)で表現するものもある。この方法は単一の物体でHSV色空間全体を視覚化するのに適しているが、その三次元的な性質のため二次元のコンピュータインターフェイスにおける色の選択には適していない。

HSV色空間は円柱状の物体として視覚化されることもあり、上記と同様に色相は円柱の外周に沿って変化し、彩度はやはり円状の交差点の中央からの距離に伴って変化する。明度もまた頂点から底へ向かって変化する。このような表現はHSV色空間のモデルとしてもっとも数学的に厳密であると考えられるかもしれないが、実際のところ視覚化された彩度レベルと色相の精度は黒に近づくにつれて明らかに減少する。さらに、通常コンピュータは有限の範囲でRGB値を格納する。精度の制限は人間の色認知能力の限界とも関連し、ほとんどのケースで円錐による視覚化はより現実的とされている。

Fig1_2_8_4

2.8.4 HLS

HLS色空間とは、色相(Hue)、彩度(Saturation)、輝度(Lightness/Luminance または IntensityFig1_2_8_53つの成分からなる色空間である。HSV色空間によく似ている。 HSLHSIと呼ばれることもある。HSVに近い表現法である。明度と輝度との違いは値の算出方法である。明度がrgb各色のビットを足して単純に3で割ったものであるのに対し、輝度は下に書かれているように各色の重み付けが違う。(比率 :0.29891 :0.58661 :0.11448) 明度より輝度の方がより人間の目から見た場合の明るさに近いといわれる。

色相:色味を0360度の範囲の角度で表す。0度は赤で、その反対側に位置する180度は赤の反対色にあたる青緑。すなわち、反対色を見つけるのも容易。色相についてはHSVと同じである。

彩度HSVとは違い、純色から彩度が落ちるということは、すなわち灰色になっていくという考え方に基づいている。

輝度:明度100%を純色とし、そこからどれだけ明るさが失われるかを示すHSVとは違い、輝度0%を黒、100%を白とし、その中間(50%)を純色とする。50%以下はHSVの明度を示し、50%以上はHSVの彩度を示すと考えると分かりやすい。

HLS色空間を使う代表的なアプリケーションとしては Microsoft Windows (ペイントを含む)、CSS3Paint Shop Pro などがある。 HSV色空間を使う代表的なアプリケーションとしては Mac OS XPhotoshopIllustrator などがある。 更に、両方をサポートするアプリケーションもある。

 

光と色の基礎知識 No.34

2.8.2 均等色空間

Uniform Color Spaceのことである。色空間上での距離・間隔が、知覚的な色の距離・間隔に類似するよう設計されている空間である。色の物理的な差異よりも、人間の知覚上での差異に主眼を置いた色空間。工業的には、工業製品の色彩の管理に要請される。

XYZ表色系

RGB表色系は色知覚のよい近似であるが、知覚できる色を完全に合成できるわけではない。たとえば、レーザー光などにみられる単一波長の色はRGB色空間の外側であって、加色によって再現することができない。この問題は、RGBの係数にの値を許可することによって色空間を拡張すれば表現することができるが、取り扱いに不便である。

したがって、RGB表色系を単純な一次変換で負の値が現れないように定めたXYZ表色系を、CIE1931年にRGB表色系と同時に定めた。XYZ表色系は他のCIE表色系の基礎となる。

RGB表色系と異なりXYZ表色系では、それぞれの数値と色彩との関連がわかりにくい。Yは明度を表し、Zはおおむね青みの度合いを表すと考えてよい。Xは、それら以外の要素を含むと考えられる。

Fig1_2_8_2

Lab色空間Lab color space

Lab色空間は、補色空間の一種で、明度を意味する次元 L と補色次元の a および b を持ち、CIE XYZ 色空間の座標を非線形に圧縮したものに基づいている。

Hunter 1948 L, a, b 色空間の座標軸は Lab である。しかし最近では CIE 1976 (L*, a*, b*) 色空間の非公式な略称としても Lab が使われている(こちらは CIELABとも呼ばれ、座標軸は実際には L*a*b* である)。このため、単に Lab と記述すると若干あいまいとなる。これらの色空間は用途は相互に関連しているが、実装は異なる。

どちらの色空間もマスターの色空間である CIE 1931 XYZ 色空間から派生したもので、CIE 1931 XYZ 色空間はどのスペクトル出力分布が同じ色として知覚されるかを予測できるが、知覚的均等性はなかった。マンセルカラーシステムに強く影響され、どちらの"Lab"色空間もXYZ空間から単純な式で変換できるが、XYZよりも知覚的に均等になっている。「知覚的に均等」とは、色の値が同じだけ変化したとき、人間がそれを見たときに感じられる変化も等しいことを意味する。色を有限精度の値で表すとき、これによって色合いの再現性が向上する。どちらのLab色空間も、ホワイトポイントの変換前のXYZデータについて相対的である。Lab値は絶対的な色を定義するものではなく、あくまでもホワイトポイントを指定した上での相対的値である。実際にはホワイトポイントには何らかの標準を仮定し、明確に示さないことが多い。例えば、絶対的値を示すレンダリングインテントである ICC L*a*b* CIE標準光源 D50 をホワイトポイントとした相対値であり、他のレンダリングインテントとは相対的関係にある。

CIELABにおける明度は相対輝度の立方根を使って計算され、Hunter Lab では平方根を使う(近似方法がやや古い)。既存の Hunter Lab 値と比較するなどの用途以外では、一般にCIELABの使用が推奨されている。

Fig1_2_8_3
 

色空間は、三刺激値XYZは色の基本的刺激量を表現しているが、企業での色管理には扱いにくい表示量なので、例えばこれを色相、明度、彩度の三属性に対応した表示方法に変換して使っている。等しい大きさに知覚される色の差が、色の空間内の等しい距離に対応するように意図した空間を均等色空間(UCSというが、このUCS座標の距離で色差の大きさを表示すことも可能である。

このように三刺激値の座標を色感覚に対応するような座標に変換して利用した方が色彩管理に便利である。変換する方法はJIS Z 8730(色の表示方法)に制定されているが、そのなかで最も広く利用されているのがL*a*b*表色系の色度図である。従って、その明度を持つ無彩色の座標がa*=0b*=0の原点近傍に投影されている。ここを中心に外側に広がるに従って、色は鮮やかさを増していく。なお、このa*b*平面に直交して明度を表わすL*軸がある。このように知覚される色と対応がとれる色の座標を用いて色彩管理に役立てられている。

 

光と色の基礎知識 No.33

2.8 色空間

 色空間は、立方的に記述されるの空間である。色を秩序立てて配列する形式であり、色を座標で指示出来る。色の構成方法は多様であり、色の見え方には観察者同士の差異もあることから、色を定量的に表すには、幾つかの規約を設けることが要請される。英語のColor Spaceであるから、カラースペースともいう。また、色空間が表現できる色の範囲を色域という。色空間は3種類か4種類の数値を組み合わせることが多い。色空間が数値による場合、その変数はチャンネルと呼ばれる。

色空間の形状はその種類に応じ、円柱や円錐、多角錐、球などの幾何形体として説明され、多様である。

Fig1_2_8_1

2.8.1 表色系

表色系は心理的概念あるいは心理物理的概念に従い、色を定量的に表す体系である。通常は3つの方向性を具える空間で表現され、色空間を構成する。

混色系(color mixing system)とは色を心理物理量と捉え色刺激の特性によって現すものである。数値として伝達する場合に適している。

顕色系(color appearance system)は、色を色の3つの特徴に従って配列して、その間隔を調整し整合性を高め、尺度と共に差し出すものである。後述のマンセル表色系やNCSが代表的な例である。

色の具現化のガイドが厳格な色体系は、色を直接作り出す場面で用いられることが多く、そうでない色空間は、色を情報として伝達する場面で用いられること場合が多い。

数学的には3つの変数があれば、すべての色を表現できると言える。しかし、すべての色を表示できる必要がない状況や、そのほか実用の便宜のために、2変数以下、あるいは4変数以上を用いる色空間もある。また変数の取り方もさまざまなものがあり、目的に応じて多種多様な規格が存在する。計算によってある色空間から別の色空間への変換は行えるが、変換後の色空間で表現できない色の情報は失われてしまう。また、その計算はふつう不完全である。色を扱うにあたっては、なるべく色空間を統一して作業することが求められる。なお、色空間にはカラープロファイルとして記録可能な色空間 (RGB,RGBA, YCbCr, CMYK, Lab color) と記録できない色空間がある。

 

光と色の基礎知識 No.32

2.6.5 段階説

 三色説と反対色説とが長年論争されてきた。最近では、網膜の視細胞レベルでは三色説に、それ以降の神経細胞レベルでは反対色説に則って、光の処理がされていると考えられている。この説を段階説という。(下図参照)

 色覚モデルはたくさんの種類があり、未だに1つの説に絞られていないのが現状である。

Fig1_2_6_9
・三色説

ヤング=ヘルムホルツの三色説Young-Helmholtz theory)は、トマス・ヤングの説を、ドイツの生理学者ヘルマン・フォン・ヘルムホルツが発展させた色覚学説の1つをいう。

この説は、赤・青・緑の3色の感覚に相応する3種の組成子が網膜に存在すると仮定し、波長によって各組成子が様々な程度に興奮する結果、あらゆる色彩の感覚が生じるとした。赤緑物質と青黄物質の存在を仮説とするヘリングの反対色説と対照される主張するものである。つまり、色覚に赤、緑、青(あるいは紫)の3要素があり、これらが同じ割合で刺激されると白色を感じる。色別は3要素の刺激の比率に応じて生じる、というものである。その後、網膜の色覚受容器である錐状体に、赤、緑、青 (RGB) に最もよく反応する3種が区別された。これらの要素の1つないし2つを欠くと色盲となり、感度の鈍いものは色弱となる。大部分の色盲表やカラーフィルム、カラーテレビはこの説を応用している。

・反対色説

エバルト・ヘリングKarl Ewald Konstantin Hering, 183485 - 1918126は、ドイツの生理学者、心理学者で、色覚についての研究を行ったことで知られ、ヤング=ヘルムホルツの三色説に対し、赤と緑を加法混色して黄色が知覚されるのは無理がある、と考え、反対色説 (Opponent process) を唱えた。

Fig1_2_6_10反対色説は、エバルト・ヘリングによって提出された色の知覚機構理論である。対比、残像などの現象をもとにして、網膜に 3種の対をなす視物質があると仮定し、これらの光に対する生化学的な反応に基づいて色覚が成立するとみなす。3種の視物質は白-黒物質、黄-青物質、および赤-緑物質と名づけられ、それぞれ異化によって白、黄および赤の感覚を生じ、同化によってそれぞれ黒,青および緑の感覚を生じると考えられた(反対色)。以上のようなことから、この説は反対色説とも呼ば、,また、赤、黄、緑、青を四つの基本色と想定するので。、四色説とも呼ばれる。

 

2.6.6. 反射と透過

 反射reflection)は、などのがある面で跳ね返る反応のことである。

・弦の振動の反射

ひもや弦などを振動させると、そのは周囲に伝わっていく。その時終端において反射が起きる。反射は終端によって2種類に分けられる。

・固定端反射 

終端を固定したときに起きる反射。振幅が反転した波が反射される。

・自由端反射 

Fig1_2_6_11終端を固定せず自由に動ける状態にしたときに起きる反射。同じ振幅の波が反射される。

また、透過とは、可視光線)に対してのことをいう。そして光は電磁波の一種であるので科学的に一般化して、ある物質がある電磁波に対して透明であるとは、その物質と電磁波との間に相互作用が起こらず、電磁波の吸収および散乱が生じないということを意味する。ある物質が電磁波を吸収する場合、その物質は吸収した波長補色に色づいて見える。例えば、葉緑素色に相当する680 ~ 700 nmの波長の光を吸収するため、補色の色に見える。

Fig1_2_6_12-反射(reflection反射は、波が異なる媒質との境界面にぶつかり、その一部がもとへ戻る現象である。粒子線の反射は粒子線の波動性に基づいて起こる。波の波長に比べて境界面が滑らかであれば、反射の法則に従う方向に反射波が生じ、境界面の凹凸が波長と同じ程度であれば反射波はいろいろな方向に広がる。後者を乱反射といい、これに対して反射の法則に従う場合を鏡面反射という。-透過(permeation透過は、光や放射能などが物質の内部を通り抜ける現象である。

例えば、赤色の半透明材料に太陽光などの白色光を照射すると赤色成分以外の光はすべて吸収され赤色のみ通過するために人間の目には赤色として弁別(知覚)される。

透過率(transmittanceまたは透過度とは、光学および分光法において、特定の波長の入射光が試料を通過する割合である。これに対して吸光度(absorbanceは分光法において、ある物体を光がFig1_2_6_13通った際に強度がどの程度弱まるかを示す無次元量である。光学密度(optical densityとも呼ばれることがある。吸収・散乱・反射をすべて含むため、吸収のみを表すものではない。

 

2.7 光学濃度(OD:optical density)

画像の濃さの客観表現に用いられるもので、画像着目部の反射率RとするときD=log10(1/R)で定義する。透過画像場合R過率T置換される。測定光学系や光源、分光分布特性ついて各種異な測定条件があり、注意が必要である。

また、単なる濃度とは、印画紙やフィルム上の画像の濃さを表わす尺度である。印画紙の場合は不透明なので、光を反射する量が少ないほど濃度が高くなる。フィルムの場合は光が透過する量が少ないほど濃度が高くなる。Densityの頭文字をとってDの単位で表示する場合がある。

Fig1_2_7_1
吸光度
(absorbance)は、光散乱がなく単純な透過吸収しかおこっていない範囲ではまったく同じものである。定義は透過率transmittanceの逆数の常用対数で示したものである。  
しかし、細胞懸濁液などの場合は必ず光散乱が伴っている。この場合においては、吸光度という言葉は使わない。吸光度は、本来あくまでも散乱のない系について定義され、使用されるものである。

一方、上述した光学濃度(光学密度)は、散乱があろうがなかろうが、測定条件における透過率から機械的に上記の定義に従って計算されるものなので、この場合は吸光度とも absorbanceともいうことはない。

物理的な意味はともかくとして、absorbanceに対する訳語は吸光度であり、optical densityに対する訳語は光学濃度あるいは光学密度である。これらを混用することは、誤訳である。

細胞の濃度を測る場合は光の散乱を利用するので「濁度」と呼ぶことが多いようであるが、densityは密度であるから光学密度とでも訳すのがいいのかもしれない。しかし、これだと別な意味にとられることが考えられるので、一般的には光学濃度になるのがよい。これは、光のエネルギーが吸収されるわけではないので「吸光度」では違和感があるのがと考えられる。

 

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