2.4.3 見えの仕組み

・視細胞

 視覚情報処理の並列性は大脳皮質で始まるわけではなく皮質以前に、網膜レベルですでに始まっている。網膜からV1までの視覚経路には並列性があり、少なくとも2つの経路から構成されている。1つは外側膝状体の大細胞層で中継される大細胞系、もう1つは外側膝状体の小細胞層で中継される小細胞系である。錐体光受容器には分光感度特性の違3種類(L錐体、M錐体、S錐体)がある。異なる種類の錐体の信号の差分(L-MS-(L+M))をとることにより色の信号が作り出される。この信号は小細胞系で伝えられる。一方、異なる種類の信号を加算(主にL+M)することにより、輝度(明るさ)の信号が作り出される。この信号は大細胞系で運ばれる。最近、明らかにされているところでは、色の信号は外側膝状体の顆粒細胞層(koniocellular layer)でも中継されているようである。

-錐体

Fig1_2_4_7
人間の錐体細胞(S,M,L)と桿体細胞(R)の吸収スペクトル

錐体細胞cone cellとは、視細胞の一種である。名前はその形態から由来する。網膜の中心部である黄斑に密に分布する。 錐細胞円錐細胞などともいう。

色(波長)に対し敏感に反応するが、光量(波幅)に対し鈍感である。

暗闇の中では錐体細胞の活動が鈍くなり桿体細胞に依存した視覚になるため、色がわからなくなる。

ヒトの網膜には赤・緑・青の各錐体が存在し、それぞれが主に赤・緑・青色の光を吸収する。ヒトが感じる光がこの3色のみであるため、ヒトにとっての光の三原色も同じように赤・緑・青となる。

ただし、赤錐体、緑錐体といっても赤・緑に吸収スペクトルのピークがあるわけではなく、両者とも図にあるように吸収スペクトルのピークは黄色である。

-桿体(杆体)

桿体細胞は、視細胞の一種である。桿細胞ともいう。錐体細胞は色を識別するが光量が充分でないと感知できない細胞で、桿体細胞は色を識別できないが僅かな光でも感知する。暗闇の中では錐体細胞はほとんど働かないが、桿体細胞が働く。このため暗い所では、物の形は判っても色ははっきりとは判らない。

フクロウやミミズクなど夜行性の鳥の視神経細胞は、主として桿体から成るが、昼行性の多くの鳥は桿体細胞がほとんどないため、暗いと全く視覚を失う鳥目)。 人間では錐体細胞が視神経乳頭の周囲に集中し、桿体細胞はその周縁に存在するため、暗いと視覚はあるが焦点が合い難く、視力が落ちる。

・光の反射、透過、吸収

出典:http://www.heat-tech.biz/products-hph/hsh-gj/hsh-gj-hhn/hsh-gj-hkb/1707.html

下図の様に物体に入射した光は一部が反射され、一部が透過し、一部が吸収される。

反射光の割合がA%とすれば、この物体の反射率はA%となる。同様に透過率はB%,吸収率はCである。ここでABCは必ず100%になる。

Fig1_2_4_8
これはエネルギー保存則の通りで、エネルギーは形はかえても、その量は増えも減りもしないということで、入射光のエネルギーは(透過光エネルギー+反射光エネルギー+吸収されたエネルギー)になるということである。

また、放射率と言われるものがある。これは物体がある温度になったときに、そこから光(マイクロ波~赤外線~可視光域が主)の形でエネルギーが放射されるが、この放射度合いの数値である。最も放熱し易い仮想物体が黒体で、全ての波長で放射率が100%でデータある。現実には存在しない。

重要な点は必ず「吸収率=放射率」の関係になることである。吸収しやすいほど放射もしやすく、吸収率がゼロであれば放射による放熱もできない。

Fig1_2_4_9正確にはこの関係はある波長についてのみ成り立つ。ガラスは可視光域の透過率が100%に近く、吸収率はゼロに近いが、赤外域(約3μm以上)では透過率がほぼゼロになり、結果的にほぼ完全な吸収体になる。温室はこの性質を利用したもので、太陽光は殆どガラスを透過して温室内に入り込み、そこで熱になって室内を温める。温まった室内からは長波長の赤外域放射で放熱しようとするが、その波長域ではガラスの透過率がゼロであり、このガラスの断熱性能がよければ(ペアガラスなど)熱が外部に直接出ていくことが出来ず、温室内に熱が留まる。

 金属は波長が長くなるほど吸収率が低下するので、遠赤ヒーターでの加熱には適さない。可視光に近い波長での加熱に適しているから、ハロゲンランプヒーター(ピーク波長は約1μm)が最適である。それでも金属材料によっては加熱不可能に近い金属もある。例えば銅やアルミなどは可視~近赤外域でも反射率が高く、おまけに熱伝導もよいので加熱困難である。ただし、これらも表面状態によっては加熱できる。(酸化変色しているとか細かい凹凸があるなど)非金属(セラミック、プラスチック、紙、木、人体等)は一般的に遠赤外域で放射率(=吸収率)が高くなるので、遠赤ヒーターが適している。ただし、遠赤ヒーターでは高温にはできないので、このような対象物でも急速に高温にしたい場合などはハロゲンランプヒーターの方が適している。

放射率(=吸収率)は、100%以上はありえない(どの波長に対しても)。仮想的な物体である「黒体」がすべての波長域で100%であり、これにかなり近いのは粉末状カーボン(9598%)あたりである。

・色の許容範囲

 測定した三刺激値XYZUCS(均等色空間)に変換すると、例えば、L*a*b*座標で表示できるようになるので、2色の座標間の距離で知覚色差の大小が比べられる。つまり、色の許容範囲を色差値で表現することができるようになる。通常、色の許容差は当事者間の協定によって決めるべきものであるが、参考までに、JIS規格や各種の工業界で、一般的に使用されている事例を紹介する。(下表参照)

Fig1_2_4_10

 一方、本来人間は可視光領域は380nm780nmとなっているが、全ての動物が同じではない。例えば、「ハチ」がおよそ300nm650nmまで、「イヌ」はおよそ650nm780nmまでの可視光範囲となっている。これは、それぞれの生物種によって活動する時点での視覚要求が異なっているためである。ちなみに「ヒト」の一部は紫外線領域まで見える場合があるが、これは過去に4波長の視覚を持っていた証でもある。(下図参照)

Fig1_2_4_11

・同化作用による色の見え方

同化(Anabolismとは、小さな部品から分子を構成する代謝過程である。これらの反応にはエネルギーが必要である。代謝過程を分類する1つの方法として、細胞、組織のレベルにおいて「同化作用」か「異化作用」かというのがある。同化は、大きな分子を小さな部分に分解して細胞呼吸に用いる異化から得られるエネルギーによって起こる。このエネルギー供給は、多くの場合はアデノシン三リン酸を通じて起こる。

同化過程は、器官や組織を「組み立てる」方向に働く。このような過程で細胞は成長、分化し、複雑な分子が構成され、個体は大きくなる。同化の例としては、骨の成長や石化、筋肉量の増加等がある。

Fig1_2_4_12

 普段、なにげなく見ている色は、我々が考えているよりずっと複雑で面白いものがある。そして、その効果は日常生活の中にも上手く取り入れられている。例えば、スーパーに買い物に行った際、気をつけて見てると、みかんは赤やオレンジのネットに、枝豆やオクラは緑や青のネットに入っていることがある。これは、色相の同化や彩度の同化を利用して美味しそうに見せているのである。

 “Creation”と赤字で書いた文字の上に、黄と青の縦縞模様を重ね合わせて見ると、オレンジ色やパープル色にみえる(縦縞の最初が黄と青の違い)。これは明らかに錯覚でいかに周囲の環境条件で色別する能力が変わるか(この場合は同化であるが)を物語っている。