2.3.2 感覚

生理学的には、知覚の方法である。感覚とその作用、分類、理論は様々な分野で重なって研究されている。例えば、神経科学、認知科学、認知心理学、哲学がある。

また、一般的な用法として、もっと高次な認知の仕方(文化的・社会的な物事の感じ方)のことも「感覚」ということがある(例:「日本人の感覚では・・・」「新感覚」)。

・定義と歴史

現在広く認められている感覚の定義は、「特定の物理的エネルギーに応答し脳内におけるシグナルが受容・解釈される決められた部分に一致する、感覚細胞の型またはそのグループを含む1つのシステム」とされている。論争が起こるところは、多様な細胞の正確な分類と脳に於ける領域のそれらのマッピング(位置づけ)である。感覚を初めて分類したのはアリストテレスである。(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)の5分類で、ここから五感と呼ばれる。現在では少なくとも7つ以上の感覚があることが広く認められている。

現代の生理学では感知される情報の内容、感知機序、伝達様式などからより多くの種類に分類されており、その分類自体も確定してはいない。かゆみをはじめとして、仕組みが未解明の感覚も多く残されているからである。

・ヒトの感覚分類

5分類

ヒトの感覚は5分類では次のようになる。

体性感覚:表在感覚(皮膚感覚)と深部感覚。

表在感覚には触覚(触れた感じ)、温覚(暖かさ)、冷覚(冷たさ)、痛覚(痛さ)がある。

深部感覚には運動覚(関節の角度など)、圧覚(押さえられた感じ)、深部痛、振動覚がある。

内臓感覚:内臓に分布した神経で、内臓の状態(動き、炎症の有無など)を神経活動の情報として感知し、脳で処理する仕組み。

臓器感覚(吐き気など)

内臓痛

特殊感覚:視覚(目で見る)、聴覚(耳で聞く)、味覚、嗅覚、前庭感覚(平衡感覚)がある。

視覚:光を網膜の細胞で神経活動情報に変換し、脳で処理する仕組み。

聴覚:音波を内耳の有毛細胞で神経活動情報に変換し、脳で処理する仕組み。

味覚:食べ物に含まれる化学物質(水溶性物質)の情報を、舌、咽頭、喉頭蓋などの味覚細胞で神経活動情報に変換し、脳で処理する仕組み。

嗅覚:鼻腔の奥にある嗅細胞で、空気中の化学物質(揮発性物質)情報を神経活動情報に変換し、脳で処理する仕組み。

前庭感覚:内耳の半規管などで、頭部の傾き、動き(加速度)などを神経活動情報に変換し、脳で処理する仕組み。

他の感覚

平衡覚(前庭感覚)平衡(身体の傾き、全身の加速度運動)に対する知覚であり、内耳の流体を含む腔に関係する。方向や位置確認も含めるかどうか意見の相異があるが、以前の奥行感覚と同様に"方向"は次感覚的・認知的な意識だと一般的に考えられている。

固有感覚:(運動感覚)体に対する意識(筋、腱内の受容器による筋、腱、間接部の緊張の変化)の知覚である。ヒトが大きく依存する感覚であり、しかしながら頻繁に意識されない感覚である。説明するより更に簡潔に明示すると、固有感覚とは、体の様々な部位の位置する場所を感じているという"無意識"である。これは目を閉じて腕を周りに振ることで演示することができる。固有感覚機能が正確だと思い込んで、どの他の感覚にも感知されてないにも関らず、直ぐに実際にある手の位置の意識が無くなるだろう。

ヒト以外の感覚

-ヒト類似感覚

他の生物も上記で挙げたような周りの世界を感じとる受容体を持つが、そのメカニズムと能力は幅広い。

嗅覚:ヒト以外の種では、イヌが鋭い嗅覚を持つがその仕組みは同様である。昆虫は嗅覚受容体をその触角に持つ。

視覚:マムシや一部のボアは、赤外線を感知する器官を持つ。つまり、これらの蛇はえさの体熱を感じることが出来る。

-電気感覚:サメ・エイ・ナマズなどが持っている。デンキウナギは透明度の低い水に棲むため視覚が活用できないため、電気を発信しレーダーのように周囲の状況を把握する。

-磁気感覚:ハトなどの帰巣本能に役立っている。

・被視感度

Fig1_2_3_13比視感度(Luminosity function, or Photopic luminous efficiency function)とは、ヒトの目が光の波長ごとの明るさを感じる強さを数値で表したものである。

明るい場所に順応したときに、人間の目が最大感度となる波長での感じる強さを "1" (つまり、100%のこと)として、他の波長の明るさを感じる度合いをその比となるよう、1以下の数で表したものである。

明るい所では555nm(ナノメートル)付近の光を最も強く感じ、暗いところでは507nm付近の光を最も強く感じるとされる。標準比視感度とは、国際照明委員会(CIE)と国際度量衡総会では、人間の比視感度の平均から世界標準となる「標準比視感度」が規定された。標準比視感度には「明所視標準比視感度」と「暗所視標準比視感度」がある。特に断らなFig1_2_3_14い場合は、視感度といえば明るい環境での人間の目の感じ方である明所比視感度のことを指す。

W.G.WrightJ.Guildの等色実験に基づき、CIEで定められた等エネルギースペクトルに対する目の感度をスペクトル刺激値といい、この感度曲線を等色関数といいます。

「私たちが色を感じるプロセスと測色計の違いについて。」では、これを「人間の目に対応する分光応答度」(等色関数)と説明しています。等色関数は2°視野と10°視野の場合がCIEで採用されています。

・明所視と暗所視

明所視とは、光量が充分にある状況での、目の視覚のこと。ヒトや多くの動物では、明所視では色覚が可能であり、これは錐体細胞のはたらきによる。

人間の目には3種類の錐体細胞があり、これらはそれぞれえ異なる波長の光に感度を持つ。錐体細胞の色素は吸光波長のピークを420 nm()534 nm(青緑)564 nm(黄緑)にもつ。錐体細胞の感度は互いに重なり合い、可視光スペクトルを形成している。最大視感度は555 nm()での683 lm/Wである。 人間の目は、暗所では暗所視を、中間の明るさでは薄明視を用いている。

Fig1_2_3_15暗所視とは、光量が小さい状況での、目の単色の視覚のこと。錐体細胞は光量が小さい場合には機能しないことから、暗所での視覚は桿体細胞のみによって生じる。そのため、暗所では色覚は生じない。暗所視は、輝度が10-2から 10-6 cd/m2のあいだで生じる。

薄明視は、中間の明るさで生じる(輝度が10-2 から 1 cd/m2)もので、暗所視と明所視が組み合わさったものである。しかし薄明視では、視力や色弁別の能力は必ずしも正確ではない。

輝度が1 から 106 cd/m2程度の通常の光量下では、錐体細胞による視覚がメインであり、これは明所視とよばれる。この場合は、視力や色弁別は良好である。

科学的文献では、暗所照度(scotopic lux)という語が使われることもある。これは、明所照度(photopic lux)に対応するもので、照度を計算する際の視感度関数に、明所視感度関数ではなく暗所視感度関数を用いたものである。

・プルキニェ現象(ブルーシフト、青偏移)

Fig1_2_3_16プルキニェ現象Purkinje Phenomenonもしくはプルキニェ効果(Purkinje effectは、19世紀のチェコの生理学者ヤン・エヴァンゲリスタ・プルキニェが解明したことから名付けられた視感度がずれる現象をいう。「プルキニエ」や「プルキンエ」と表記されることもある。

色は網膜の視細胞で感知しているが、明るい場所では赤が鮮やかに遠くまで見え、青は黒ずんで見える。一方、暗い場所では青が鮮やかに遠くまで見えるのに対して、赤は黒ずんで見える。これは、桿体と呼ばれる視細胞の働きによるもので、人の目は暗くなるほど青い色に敏感になる。

防犯のために活用する動きも見られる。奈良県警はイギリスのグラスゴーの防犯対策に倣い(ただし、グラスゴーでは当初景観改善のために導入された)、奈良市で青色街路灯を導入し一定の効果をあげたため、奈良市以外でも天理市、生駒市など県北部の都市を中心に導入を進めている。現在は兵庫県においても多数採用されている。

・分光感度特性

Fig1_2_3_17 視覚系の感度は、光の波長によって異なる人間の視覚系の視感度は、明所視では555 nmでピーク値をとる。このときの感度を基準として、他の波長の光に対する感度を求めると、可視光全体に対する比視感度が求まる。暗所視では507 nmの光に対して最も感度がよい。暗所では感度曲線が短波長側にシフトしている。この事実をプルキニエシフトとよぶ。放射輝度と視感度をかけ合わせた値を輝度とよぶ。

明所視では色が知覚される。色覚異常者の視感度曲線等色関数から、分光感度の異なる3種類の光受容器(錐体)が存在することが示唆される(三色説)。健常者の等色関数および2色型色覚異常者の混同色中心から、錐体分光感度を求めることができる。暗所視における光受容器(桿体)は1種類であるため色覚は存在しない。桿体分光感度は暗所視視感度に等しい。

なお、分光感度特性は一般的に使用される「測定器」でも固有に持っているが、人間の目の感度と相関性があり、ほぼ同一の特性を持っていると考えて良い。