2.3.1 目の仕組み

・人間の目

Fig1_2_3_7は受容器の一つで、光を感じ取る。構造がカメラに似ていることから「カメラ眼」とも呼ばれている。顔面に左右一対あり、立体視による遠近感を認識できる。

-構造



球体になっており、外側は角膜、強膜で構成され、眼球の球体を維持する。

-光の受容

像はまず角膜を通り、瞳孔を経て眼球内部に入る。外部の光の量によって虹彩が収縮し、瞳孔の大きさを調節する。

網膜上に像を合わせるために水晶体により像を屈折する。水晶体はチン小帯・毛様体の働きによって厚さが調節され、カメラと同じように広い距離の焦点を合わせることができる。

屈折した像は硝子体を通して網膜に映りこむ。

Fig1_2_3_8
上図は、遠くからの光左図と近くからの光右図)が網膜で焦点が合う様子を示している。近い場合はレンズが厚くなっている。

水晶体がレンズ状であるため水晶体が屈折の主な役割を果たしていると思われがちであるが、実際には屈折は空気と角膜との屈折率の差によってほとんど行われており、水晶体は焦点の調整のみに関わっているといってよい。そのため、角膜が傷つくと失明の危険がある。網膜には桿体細胞、錐体細胞の2種類の視細胞があり、この細胞を通じて視神経経由で視覚情報が大脳に送られ、視覚となる。桿体細胞は、暗所で機能する。光に対する感度が高い。錐体細胞は、明所で機能する。光に対する感度は低いが色彩の識別が可能である。

外部には、瞼、まつ毛がある。瞼は外部からの異物や強力な光をさえぎるほか、まばたきすることにより眼球表面結膜へ涙を送る。

・瞳の色

個体により瞳の色が異なるのはメラニン色素の量の違いによる。色素量によって青<緑<茶<黒のように見える。色素異常によって色素量が極端に少ない場合、血液の色が透けて見え、赤い瞳となる。白ウサギの目が赤いのはこのためである。

視覚神経科学

眼は、感覚器のひとつであり、角膜などの光学系と神経系の一部である網膜から構成される。光学系は角膜、レンズ(水晶体、瞳孔などから構成され、光量の調整や焦点の調節などの機能を持つ。網膜の光受容細胞では光の強度と波長の分布が神経信号に符号化される。網膜において符号化された情報は、神経細胞の間を神経線維の興奮の伝導の形で伝えられる。以降の一連の神経線維の経路を視覚路と呼んでいる。反対色などの視覚特性は網膜内での処理に由来すると考えられている。網膜からは視神経が発しており、外側膝状体(LGN)に投射している。外側膝状体からは視覚野への投射がある。視神経は上丘や視床の一部にも投射するが、こうした情報伝導路は眼球運動や概日周期などの非画像的な情報処理に関与するものであり、視覚情報処理の主たる経路は外側膝状体から第一次視覚野に至る経路であると考えられている。第一次視覚野からは、それ以降の高次視覚野に対して投射が存在する。第一次視覚野以降の伝導路は、物体の形状や色を処理する"What"経路と、物体の空間における位置や運動を処理する"Where"経路に二分される。"What"経路は後頭葉から側頭葉に向かい、腹側系と呼ばれる。"Where"経路は後頭葉から頭頂葉に向かい、背側系と呼ばれる。こうして処理された情報は、前頭葉などでさらに高次な処理を受けている可能性がある。

・網膜における情報処理

光学系を通過した光は、網膜において網膜像を結ぶ。網膜像は網膜上の光受容細胞によってサンプリングされ、神経信号として符号化される。光受容細胞には分光感度特性の異なる桿体および錐体がある。光受容細胞はヒトの場合1億個以上存在する。錐体は網膜の中心部で密に分布し、桿体は中心部に少なく周辺部に多く分布している。光受容細胞は光入力に対して、電気的な信号によって応答する。光受容細胞の応答は、網膜内の神経節細胞に伝わる。神経節細胞の軸索は片眼で100万本程度あり、束になって眼球を出て、左右の視神経を形成し、さらに間脳の腹側から脳内に進み、間脳の視床の一部である外側膝状体(または外側膝状核)と呼ばれる神経核に達する。そこで、外側膝状体の神経細胞とシナプスを形成する。

・皮質下における処理

-皮質における処理

外側膝状体の神経細胞の軸索は大脳新皮質の後頭葉の一次視覚野に達する。

-視覚における困難

不良設定問題  結合問題  窓問題  ホムンクルス  おばあさん細胞  クオリア

・網膜の構造

Fig1_2_3_9 人の目は3層の膜からなっており、一番外側には網膜という組織がある。網膜に投影された画像は電気信号に変換されて脳に送られ、分析されて「見る」ことができる。

網膜の表面には、「錐体」と「桿体」という光を受け取る2種類の視細胞がある。

 錐体は網膜の中心部分に多く分布しており、明るい所でしか働かず、色の区別ができる。また、解像度が高く(視力が良い)ものをはっきりと見ることができる。

 一方、網膜の周辺に多く分布する「桿体」は色の区別はできないが、非常に高感度なので暗い所で働き、動きの検出に優れている。しかし、解像度は低く(視力が悪い)ぼんやりとしか見えません。また、この二つの種類の視細胞の数は大きく異なり、錐体が約650万個に対して桿体は12000万個と圧倒的に多いのです(上図参照)。

・視覚の作用

Fig1_2_3_10 主に桿体の働きによってものを見ることを「周辺視」、錐体の働きでものを見ることを「中心視」といい、この2つは役割分担を明確にして共同作業している。

周辺視でわずかに動くものや小さな変化を検出し、物体として認識されると、目や体を動かして、中心視で色や形を検出して、それが「何であるか」を詳しく知ることができる。

錐体には、R錐体、G錐体、B錐体の3種の視細胞があり、入力された映像に合わせてRGBの色をそれぞれ検知する。錐体細胞の占める比率は、R:G:B40:20:1になっているので赤感度が非常に高く、青感度は最も少なくなっている。この事実は色を識別するのに赤の情報を多く集めて判断していることが分かる。

Fig1_2_3_11・網膜細胞と視物資の視覚範囲

 網膜は、組織学的に10層に分けることができる。外側から順に、網膜色素上皮層、視細胞層、外境界膜、外顆粒層、外網状層、内顆粒層、内網状層、神経節細胞層、神経繊維(線維)層、内境界膜である。外界から網膜に照射された光は、内境界膜側から網膜層を透過し、視細胞層にある錐体・桿体視細胞に到達する。

網膜には大別すると、視細胞(錐体、桿体)、双極細胞、水平細胞、アマクリン細胞、神経節細胞の5つの神経細胞が存在する。光は視細胞で電気信号に変換され、その信号(情報)は化学シナプスを介して双極細胞と水平細胞に伝達される。双極細胞はアマクリン細胞や神経節細胞とシナプス結合しており、神経節細胞の軸索が視神経として大脳の視覚中枢に連絡している。 網膜外網状層で視細胞と双極細胞、水平細胞がシナプス結合しており、内網状層で双極細胞とアマクリン細胞、神経節細胞がシナプス形成をしている。外顆粒層には視細胞、内顆粒層には双極細胞、水平細胞、アマクリン細胞、神経節細胞層には神経節細胞の細胞体が位置する。

 暗所で微弱光を感知するのに特化した桿体視細胞に対して錐体視細胞は明所で機能する。通常動物は複数の錐体視細胞を持っており、それぞFig1_2_3_12れ波長感度の異なる錐体視物質を持つことによって色覚を可能にしている。例えば人間は赤色光、緑色光、青色光を受容する3種類の錐体視物質を持っていて3色光色覚(Trichromacy)を実現している。このように錐体視物質は波長感度でグループ分けすることができるが、このグループは分子系統的なグループ分けとおよそ一致していて、錐体視物質は波長感度によって多様化したことが知られている。桿体視物質は緑色光を受容する錐体視物質から分岐し、暗所での光受容に特化した。明所で働く錐体視細胞の応答は桿体視細胞に比べて応答が速いが感度が低いのが特徴である。このように視細胞の特徴的な応答特性は光受容を担う視物質やシグナル分子の分子特性の違いに起因すると考えられている。

人間の視物資はRGB3種あり(三色型色覚)、右図に示すような視覚範囲を持っている。また、例えば鳥類は人間より多く視物資を4種類(RGBV)持っており(四色型色覚)、紫外線領域まで見えることになる。