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2020年02月

光と色の基礎知識 No.25

2.4.4 順応と色順応

視覚系に限らず、人間の感覚系は新しい環境に適応するためにその感度を変化させる機能がある。これを順応と呼んでいる。視覚の場合、例えば、上映中の映画館に入った瞬間は館内が真っ暗で何も見えないのに、しばらく経って目が慣れてから辺りを見回すとよく見える、という現象がある。この場合、視覚系が暗順応することによって光に対する感度が高くなり、より少ない光でも感知できるようになるため、暗がりでも物体が見えるようになる。

同様の感度変化が色に対しても生じる。これを色順応と呼んでいる。例えば、白熱電球の照明光の部屋を、フラッシュを使わずに昼光用フィルムで撮影すると、全体がオレンジがかって写ってしまう(下図左側)。 しかし、実際にその部屋にいる時には、部屋全体がこのような色をしているようには感じず、あたかも昼光色の照明光で照明したときのような色を感じるはずである(下図右側)。これは視覚メカニズムが照明光の色に対して順応するためである。

Fig1_2_4_13

・色順応メカニズム

このように視覚系の感度が変化すると、なぜ昼光色で照明された時の色に近づくのかとメカニズムは、von Kries (1905) によって、次のような簡単なモデルで提案された。

ここで、人間の網膜の3種類の光受容器(錐体)のそれぞれが、照明光に対して生ずる応答に逆比例するゲイン制御をしていると仮定すると、3種類の錐体の出力のバランスはほぼ一定に近い状態に保たれる。

その後、このような単純なゲイン制御だけではなく、視覚系の非線形性を考慮した様々なモデルが考案され、提案されている(MacAdam; Y.Nayatani et.al.; R.W.G.Hunt et.al.)

このように、照明光への色順応は、照明光の変化をキャンセルするように作用することが知られている。

・不完全色順応

最近、視覚系の順応は照明光の変化を 100 % キャンセルできるメカニズムではないことが指摘されている(M.D.Fairchild; I.Kuriki ら)。これを不完全順応と呼んでいる。

視覚系の感度変化(=順応)が不完全であるということは、照明光に目が十分に順応しても、必ずしも全ての物が昼白色の照明光で照らされた時と同じ色には見えない、ということである。つまり、色順応だけではわずかながら色の見えに違いが残る、ということを意味している。従って、順応だけでは色恒常性が説明できない、というのが現在の認識である。

・恒常性

 恒常性ホメオスタシスホメオステイシスともいう)は、生物のもつ重要な性質のひとつで、生体の内部や外部の環境因子の変化にかかわらず、生体の状態が一定に保たれるという性質、あるいはその状態のことをいう。生物が生物である要件のひとつであるほか、健康を定義する重要な要素でもある。生体恒常性ともいわれる。また、色の恒常性は、知覚した色が普遍のもの(元に戻す作用)として見える。しかし、不完全な性質である。

・順応性

Fig1_2_4_14

                色順応のメカニズム

色順応とは、晴天の屋外や、昼光色の蛍光ランプで照明された部屋から白熱電球で照明された部屋に入ると、はじめは空間全体がオレンジ色味がかって見えるが、次第に色を感じなくなるといった現象をいう。例えば、車でトンネルに入ると白いものは一瞬オレンジ色にに見えるが少し経つと白く感じる(見える)ようになる。また、色のついたサングラスをかけると、はじめは視界がグラスの色を通した色に見えるが、次第に意識されなくなる。この現象は、光源の分光分布に応じて、目の網膜にある視細胞のうち錐体(錐状体)の感度が変化することにより起こるとされている。

錐体には長波長に反応する赤錐体(L錐体)、中波長に反応する緑錐体(M錐体)、青錐体(S錐体)の三種がある。太陽光や昼光色の蛍光ランプといった白色の光の下では、分光分布が短波長から長波長までほぼ均一であるため、三種の錐体の感度はほぼ同じである。

つまり、錐体の感度が揃っているときには、光の色を感じなくなる。その点、白熱電球の光の分光分布は、長波長のエネルギーが高い右上がりの曲線となっているので、白熱電球で照明された部屋に入ると、赤錐状体の感度が高まり、空間全体が赤っぽく見える。

しかし、この状態は長くは続かず、ヒトの眼には、光源の分光分布に応じて錐体の感度を調節し、色の見えを一定に保とうとする働きがあるので、白熱電球の部屋にそのまま居続けると、まず赤錐体の感度が下がり、続いて緑錐体の感度が下がって、三種の錐体の感度が再び揃うようになる。色順応も色恒常同様、不完全な性質である。

Fig1_2_4_15
 上図に示すように、色順応によって色を補正するメカニズムは、例えば、赤いリンゴを太陽光で見た場合と白熱電球で見た場合では、光源の分光分布の違いによって目の感度応答が違ってくる。(感度応答のRGBの分布が違っているので当然のことである)

太陽光でみると自然のように見えるが、電灯をつけて見ると初めのうちは黄色っぽく見えるが、しばらくすると黄色みを感じなくなって赤く見えるようになる。このように目が光の色になれて白く見えるようになることを色順応という。ろうそくの炎や電灯のような赤みを帯びた光は暖かく感じ,蛍光灯や青空のように青みを帯びた光は冷たく感じられる。

 

光と色の基礎知識 No.24

2.4.3 見えの仕組み

・視細胞

 視覚情報処理の並列性は大脳皮質で始まるわけではなく皮質以前に、網膜レベルですでに始まっている。網膜からV1までの視覚経路には並列性があり、少なくとも2つの経路から構成されている。1つは外側膝状体の大細胞層で中継される大細胞系、もう1つは外側膝状体の小細胞層で中継される小細胞系である。錐体光受容器には分光感度特性の違3種類(L錐体、M錐体、S錐体)がある。異なる種類の錐体の信号の差分(L-MS-(L+M))をとることにより色の信号が作り出される。この信号は小細胞系で伝えられる。一方、異なる種類の信号を加算(主にL+M)することにより、輝度(明るさ)の信号が作り出される。この信号は大細胞系で運ばれる。最近、明らかにされているところでは、色の信号は外側膝状体の顆粒細胞層(koniocellular layer)でも中継されているようである。

-錐体

Fig1_2_4_7
人間の錐体細胞(S,M,L)と桿体細胞(R)の吸収スペクトル

錐体細胞cone cellとは、視細胞の一種である。名前はその形態から由来する。網膜の中心部である黄斑に密に分布する。 錐細胞円錐細胞などともいう。

色(波長)に対し敏感に反応するが、光量(波幅)に対し鈍感である。

暗闇の中では錐体細胞の活動が鈍くなり桿体細胞に依存した視覚になるため、色がわからなくなる。

ヒトの網膜には赤・緑・青の各錐体が存在し、それぞれが主に赤・緑・青色の光を吸収する。ヒトが感じる光がこの3色のみであるため、ヒトにとっての光の三原色も同じように赤・緑・青となる。

ただし、赤錐体、緑錐体といっても赤・緑に吸収スペクトルのピークがあるわけではなく、両者とも図にあるように吸収スペクトルのピークは黄色である。

-桿体(杆体)

桿体細胞は、視細胞の一種である。桿細胞ともいう。錐体細胞は色を識別するが光量が充分でないと感知できない細胞で、桿体細胞は色を識別できないが僅かな光でも感知する。暗闇の中では錐体細胞はほとんど働かないが、桿体細胞が働く。このため暗い所では、物の形は判っても色ははっきりとは判らない。

フクロウやミミズクなど夜行性の鳥の視神経細胞は、主として桿体から成るが、昼行性の多くの鳥は桿体細胞がほとんどないため、暗いと全く視覚を失う鳥目)。 人間では錐体細胞が視神経乳頭の周囲に集中し、桿体細胞はその周縁に存在するため、暗いと視覚はあるが焦点が合い難く、視力が落ちる。

・光の反射、透過、吸収

出典:http://www.heat-tech.biz/products-hph/hsh-gj/hsh-gj-hhn/hsh-gj-hkb/1707.html

下図の様に物体に入射した光は一部が反射され、一部が透過し、一部が吸収される。

反射光の割合がA%とすれば、この物体の反射率はA%となる。同様に透過率はB%,吸収率はCである。ここでABCは必ず100%になる。

Fig1_2_4_8
これはエネルギー保存則の通りで、エネルギーは形はかえても、その量は増えも減りもしないということで、入射光のエネルギーは(透過光エネルギー+反射光エネルギー+吸収されたエネルギー)になるということである。

また、放射率と言われるものがある。これは物体がある温度になったときに、そこから光(マイクロ波~赤外線~可視光域が主)の形でエネルギーが放射されるが、この放射度合いの数値である。最も放熱し易い仮想物体が黒体で、全ての波長で放射率が100%でデータある。現実には存在しない。

重要な点は必ず「吸収率=放射率」の関係になることである。吸収しやすいほど放射もしやすく、吸収率がゼロであれば放射による放熱もできない。

Fig1_2_4_9正確にはこの関係はある波長についてのみ成り立つ。ガラスは可視光域の透過率が100%に近く、吸収率はゼロに近いが、赤外域(約3μm以上)では透過率がほぼゼロになり、結果的にほぼ完全な吸収体になる。温室はこの性質を利用したもので、太陽光は殆どガラスを透過して温室内に入り込み、そこで熱になって室内を温める。温まった室内からは長波長の赤外域放射で放熱しようとするが、その波長域ではガラスの透過率がゼロであり、このガラスの断熱性能がよければ(ペアガラスなど)熱が外部に直接出ていくことが出来ず、温室内に熱が留まる。

 金属は波長が長くなるほど吸収率が低下するので、遠赤ヒーターでの加熱には適さない。可視光に近い波長での加熱に適しているから、ハロゲンランプヒーター(ピーク波長は約1μm)が最適である。それでも金属材料によっては加熱不可能に近い金属もある。例えば銅やアルミなどは可視~近赤外域でも反射率が高く、おまけに熱伝導もよいので加熱困難である。ただし、これらも表面状態によっては加熱できる。(酸化変色しているとか細かい凹凸があるなど)非金属(セラミック、プラスチック、紙、木、人体等)は一般的に遠赤外域で放射率(=吸収率)が高くなるので、遠赤ヒーターが適している。ただし、遠赤ヒーターでは高温にはできないので、このような対象物でも急速に高温にしたい場合などはハロゲンランプヒーターの方が適している。

放射率(=吸収率)は、100%以上はありえない(どの波長に対しても)。仮想的な物体である「黒体」がすべての波長域で100%であり、これにかなり近いのは粉末状カーボン(9598%)あたりである。

・色の許容範囲

 測定した三刺激値XYZUCS(均等色空間)に変換すると、例えば、L*a*b*座標で表示できるようになるので、2色の座標間の距離で知覚色差の大小が比べられる。つまり、色の許容範囲を色差値で表現することができるようになる。通常、色の許容差は当事者間の協定によって決めるべきものであるが、参考までに、JIS規格や各種の工業界で、一般的に使用されている事例を紹介する。(下表参照)

Fig1_2_4_10

 一方、本来人間は可視光領域は380nm780nmとなっているが、全ての動物が同じではない。例えば、「ハチ」がおよそ300nm650nmまで、「イヌ」はおよそ650nm780nmまでの可視光範囲となっている。これは、それぞれの生物種によって活動する時点での視覚要求が異なっているためである。ちなみに「ヒト」の一部は紫外線領域まで見える場合があるが、これは過去に4波長の視覚を持っていた証でもある。(下図参照)

Fig1_2_4_11

・同化作用による色の見え方

同化(Anabolismとは、小さな部品から分子を構成する代謝過程である。これらの反応にはエネルギーが必要である。代謝過程を分類する1つの方法として、細胞、組織のレベルにおいて「同化作用」か「異化作用」かというのがある。同化は、大きな分子を小さな部分に分解して細胞呼吸に用いる異化から得られるエネルギーによって起こる。このエネルギー供給は、多くの場合はアデノシン三リン酸を通じて起こる。

同化過程は、器官や組織を「組み立てる」方向に働く。このような過程で細胞は成長、分化し、複雑な分子が構成され、個体は大きくなる。同化の例としては、骨の成長や石化、筋肉量の増加等がある。

Fig1_2_4_12

 普段、なにげなく見ている色は、我々が考えているよりずっと複雑で面白いものがある。そして、その効果は日常生活の中にも上手く取り入れられている。例えば、スーパーに買い物に行った際、気をつけて見てると、みかんは赤やオレンジのネットに、枝豆やオクラは緑や青のネットに入っていることがある。これは、色相の同化や彩度の同化を利用して美味しそうに見せているのである。

 “Creation”と赤字で書いた文字の上に、黄と青の縦縞模様を重ね合わせて見ると、オレンジ色やパープル色にみえる(縦縞の最初が黄と青の違い)。これは明らかに錯覚でいかに周囲の環境条件で色別する能力が変わるか(この場合は同化であるが)を物語っている。

 

光と色の基礎知識 No.23

2.4.2 反対色性

赤と青を混ぜると紫になり、赤と緑を混ぜると黄になる。この時、紫には元の赤味も青味もあるが、黄にはそれがない。また、黄と青から白を作る場合も、元の色味がなくなる。このような色味を打ち消しあう性質を反対色性という。

反対色性は、網膜から大脳へ効率的に色情報を伝達しようとするために生じると考えられている。なぜなら、それぞれの色は錐体応答間でも高い相関があるからである。そのため、相関が低くなるよう線形変換し、冗長性を低減している。

反対色

Fig1_2_4_3ある色をずっと見ていると、目にはその色の反対の色として、「反対色」というものが作られる。この反対色は、「補色」ともいわれている。 この画面の左にある赤を30秒くらいじっと見つめてから、白い紙に視線を移す。すると、何やら色が見えてくることが実感できる。それは、何色かというと、青緑が見えたはずである。このような実験をすると、さまざまな色の補色が見つけることができる。

「モナリザの微笑」を描いたレオナルド・ダビンチは、「補色同士はよく調和する」といっている。つまり、デザイン的にいえば、配色賭して都合がよい、というわけである。いろいろな色で試してみると、例えば、刺身の赤に緑の笹がある。これは、お互いによく調和し、さらにお互いを引き立て合う働きをしていることが理解できる。

また、外科医の執刀着が薄い緑から青になっているのは周知の通りであるが、これは、患者の血の色の反対色が目にちらつかないようにするための工夫である。このように、日常何気なく使われている配色には、きちんとした理由があることが多い。

Fig1_2_4_4・見えの現象

-乱反射

 物体の表面がなめらかな面でないとき、その凹凸のために入射した光が、いろいろな方向に反射散乱される現象である。平面のように見える面でも光の波長と同程度の尺度でみると乱雑な凹凸があるために、一方向から光を照射しても乱反射が起って、面上の各点が二次的光源になるので、どの角度からでもその面を見ることができる。

-鏡像

鏡像とは、一般的な意味では、鏡に映った像のことである。この鏡像はまた、数学的意味での鏡像と、光の反射の性質によってつながっている。鏡面が完全に平坦ならば鏡像は元の図形と合同になるが、凹面鏡や凸面鏡のように曲面の場合はその限りではない。

Fig1_2_4_5数学での鏡像は、鏡映とも言う。鏡像も鏡映も2つの点や図形の間の関係を指す。また元の点や図形をその関係にある相手に移す操作(鏡映操作)を指す。その関係にある相手の図形のことをも指すが、この意味では鏡像または鏡像体がよく用いられる。

狭義には、n次元ユークリッド空間にひとつのn-1次元空間(超平面)を定めたとき、ある点をこの超平面に対して対称な点に写像する操作を言う。ここで対称な点とは、この超平面に対する垂線上にあり、垂線と超平面との交点からの距離が等しい2点のことを指す。

また、この操作で互いに移る2点間の関係、つまり超平面に対して対称な点同士の関係をも鏡像、または鏡映という。この意味での鏡映も鏡像も英語では"reflection"であるが、"mirror image"は鏡像関係にある図形のことを指す。

さらに狭義にはn=3の場合のみを指す。

n次元空間での狭義の鏡像同士は合同ではあるが、特定の対称性を持たない限りはn次元空間内での回転と並進だけでは重ね合わすことができない。しかしn+1次元空間内での回転や並進でならば重ね合わすことができる。これはn=2の場合は容易に確かめられる。4次元空間を移動して人の左右が入れ替わったり、体内の分子が対掌体に変換したり、物質が反物質に変換したりする設定はSF作品でよく見られる。

ある図形の全ての点を鏡映した点の集合が自身と完全に一致するような鏡映面が存在するとき、この図形は鏡映対称である(面対称である)といい、この鏡映面をこの図形の対称面と呼ぶ。鏡映対称な図形の任意の面による鏡像体はもちろん、回転と並進により元の図形に重ね合わせることができる。だが、その鏡像体を回転と並進により元の図形に重ね合わせることはできるが鏡映対称ではない図形が存在する。例えば、2回回映軸を持つが対称面は持たない図形がそうである。

-凸レンズによる虚像

 物体から出た光がレンズや反射鏡の光学結像系を通過したのち、発散光線となり,実際には像を結ばず,その光線を逆向きに延長したものが像をつくる場合,これを虚像という。平面鏡の像や,凸面鏡,凹レンズの像,および凸レンズの焦点距離内に物体を置いたときの像は虚像である。

Fig1_2_4_6
  虚像(virtual imageとは、レンズや鏡で屈折、反射された光線が実際には像に集まらないが、光線を逆向きに延長すると集まって一種の像を作ることをいう。光線はまるで虚像から発するように見える。レンズによる正立像や、平面鏡の作る鏡像は虚像である。

転じて、第三者によってつくられた実際とは正反対の姿も指す。 これは、屈折像と間違えやすいので注意を要する。

 

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