アンディマンのテクノロジー(援技力)

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2019年09月

光と色の基礎知識 No.6

1.2.4 二重スリット実験

二重スリット実験は、量子の波動性と粒子性の問題を典型的に示す実験である。リチャード・P・ファインマンはこれを「量子力学の精髄」と呼んだ。ヤングの実験で使われた光の代わりに一個の電子を使ったものである。

この実験は、古典的な思考実験であったが、実際の実験は1961年にテュービンゲン大学のクラウス・イェンソンによって複数の電子を用いて行われたのが最初であり、「1回に1個の電子」を用いる形での実験は1974年になってピエール・ジョルジョ・メルリらによってミラノ大学で行われた。その後、技術の進歩を反映した追試が1989年に外村彰らによって行われた。

Fig1_1_2_13

 電子銃から電子を発射して、向こう側の写真乾板(スクリーン)に到達させる。その途中は真空になっている。ただし、電子の通り道にあたる位置についたてとなる板を置く。その板には2本のスリット(細長い穴)がある。

電子は、電子銃から発射されたあと、2本あるスリットを通り 向こう側のスクリーンに到達する。スクリーンには、電子による感光で濃淡の縞模様が像として描かれる。このような濃淡の縞模様は電子に波動性があることを示す。実際、その縞模様は波の干渉縞の模様と同じである。

この実験では、電子を1つずつ発射させても、同じ結果が得られる。つまり、電子を一度に1つずつ発射させることを何度も何度も繰り返してから その合計に当たるものをスクリーンで見ると、やはり同じような干渉縞が生じている。

1999年には、電子や光子のような極微の粒子の替わりに、フラーレンという大きな分子を使って同様の実験を行った場合にも、同様の干渉縞が生じることが確認されている。

 「二重スリット実験」として知られるこの実験は、下図のように行われる。電子顕微鏡の中の電子源から電子を1個ずつ発射する。発射された電子は「電子線バイプリズム」という装置を通る。この装置は、中央には細い糸状の電極が張ってあり、その両側に2枚の平行な金属板を置いたものである。電極の両側を通過した電子は、検出器で11個検出される。驚くことに、電子1個を100%に近い効率で検出する感度を持っている。

Fig1_1_2_14

 この実験結果の最も不思議なことは、着弾の確率分布が干渉縞を描いていることである。1個の粒子の着弾は、一般的に思い描かれるような粒子像と完全に一致しているが、多数の粒子が描く模様は「広がった空間の確率分布を支配する何か」(=波と考えられている)の存在を指し示している。粒子と波の二重性について、多数の粒子の振る舞いが波としての性質を形作っているとする説が過去にはあった。しかし、この実験は、単一の粒子であっても、「広がった空間の確率分布を支配する何か」の存在を示しており、一般的な直観に反する奇妙な現象である。何故なら、一般的に思い描かれるような粒子像では粒子は一点に存在するはずであり、「広がった空間の確率分布を支配する何か」と同じとは考えにくいからである。しかし、この奇妙な実験結果からは、単一の粒子が「広がった空間の確率分布を支配する何か」の性質を併せ持つという一般的な直観に反する事実を認めるしかない。俄には信じ難いが、これこそが量子の本質的な性質であることは、実験が示している動かし難い真実である。なお、粒子として一方のスリットを通ったとする見方と、波として双方のスリットを通ったとする見方は、1つの現象を違う側面から見ただけと考えれば十分に両立可能であり、どちらが真の姿であるかを論じる意味は全くない。

この実験の結果が「電子が1つの粒子として、2本のスリットを同時に通過していること」を示すと主張する者もいるが、両方のスリットを粒子が通過した事実を全く確認しておらず、その見解は証拠不十分といわざるを得ない。事実、パイロット解釈を用いれば、片方のスリットの通過でこの実験結果を説明することが可能である。パイロット解釈は、この実験とは別の理由により下火となった解釈であるが、この実験結果にはパイロット解釈を否定する根拠が含まれていないため、この実験結果を「電子が1つの粒子として、2本のスリットを同時に通過していること」の証拠とすることはできない。

 

光と色の基礎知識 No.5

1.2.3 電子状態

 電子状態または電子構造とは、物質原子分子なども含む)における電子の状態のことである。電子状態間の遷移を電子遷移という。

・概説

電子の状態を表す形式が様々考えられている。

具体的な電子の状態として、電荷密度(電荷分布)、バンド構造(あるいは電子の準位)、磁気構造(あるいは電子のスピンの状態)、フェルミ面状態密度、原子間の結合の状態(電荷分布と関係)などが挙げられる。これら以外にも電子状態を示す様式は、数多く存在する。

「電子状態」と「電子構造」は通常は同義と考えてよいが、場合によってその意味合いが微妙に異なることがある。

-電子状態の遷移 (電子遷移)

-光吸収による遷移(光学遷移)

分子電磁波を吸収すると内部エネルギーが増大する。このエネルギーの増加は光量子のエネルギー ΔE に等しく、次の関係で示される。

ΔE = hν = hc / λ

ここで h プランク定数ν は電磁波の振動数λは電磁波の波長c は光速度である。

分子は電磁波を吸収したことによって電子状態に変化が生じる。具体的には電子エネルギー、振動エネルギー、回転エネルギーに変化を起こす。最もエネルギーの低い電子状態は基底状態と呼ばれ、それより高い電子状態は励起状態と呼ばれている。基底状態、励起状態にはいくつかの振動準位があり、各振動準位にもいくつかの回転準位がある。多くの分子で遠赤外、マイクロ波のようなエネルギーが低い電磁波を吸収したとすると回転状態のみに変化が生じ、中・近赤外程度であれば振動、回転状態に変化が生じる、可視光線および紫外線の場合には電子、振動、回転状態に変化が生じることになる。

-電子状態遷移の選択律

分子の電子状態が光学遷移を起こすためには以下のような選択律が存在する。選択律に従って起こる遷移は、許容遷移とよばれ、ルールに従っていない遷移は、禁制遷移とよばれている。しかし、禁制遷移であっても分子内、分子間の摂動により遷移がおこることがある。

・パリティー(偶奇性)に関する選択律

1つの光子を吸収する遷移においてはパリティーの変化を伴う( g - u は許容、g - g および u - u は禁制)。

-多重度に関する選択律

多重度は変化しない(S の変化は0

状態の対称性に由来する選択律

・電子遷移の種類

π*軌道への遷移 — π*軌道の励起状態が存在する分子は、近赤外、可視光から近紫外光領域にかけて遷移を持つことから、古くから紫外・可視・近赤外分光法 (UV-Vis-NIR) により観測がなされてきた。

π-π*遷移 二重結合のπ電子に由来する遷移。アルケンなどで見られ、孤立したC=C結合は190ナノメートル付近に吸収を示すが、共役が伸張すれば、より波長の長い(エネルギーの低い)光でも遷移を起こす。

n-π*遷移 カルボニル基などの孤立電子対に由来する遷移。ケトンなどで見られ、300nm付近に吸収を示す。禁制遷移であるため一般に吸光度は小さい。

σ*軌道への遷移 — π*軌道への遷移と同様だが、σ*軌道は一般にエネルギー準位が高いため遷移により高いエネルギーを必要とし、吸収するのは主に紫外光である。

σ-σ*遷移 — C−C結合やC−H結合に見られる。吸収するのは約150nm光である。

n-σ*遷移 エーテル、アミン、チオエーテルなどで見られる、孤立電子対のσ*軌道への遷移。190nm程度の光を吸収して遷移を起こす。

電荷移動遷移(CT遷移)原子間の電子の移動を伴う遷移。主に錯体化学で取り扱われる。

バンド間遷移 固体においてバンド理論により記述される遷移。

Fig1_1_2_11

・粒子性

 量子の粒子性とは、粒子の存在を仮定すると説明が容易ないくつもの実験の存在を根拠にしている。プランクによるエネルギー量子、光電効果、コンプトン散乱など、粒子と考えると解釈が容易な実験が多々ある。しかしながら、このことは、ナイーブ*1な意味での粒子の存在を示すわけではない。

 

 *1ナイーブ (naïve) とは、日本では、「純真」「素直」「素朴」「無邪気」「飾り気がない」などを意味するフランス語形容詞として使われている。ただし、女性形であり、男性形はナイフ (naïf)という。ラテン語で同様の意味を持つ(ただし他にもっと広い意味も持つ)nativus が語源で、同じ語源の言葉には英語のネイティヴ (native) がある。ドイツ語スウェーデン語ではnaivと書き、オランダ語ではnaïefと書き、いずれも「幼稚」「無経験」などを意味する。

例えば、美術の「アール・ナイフ(英語 ナイーブ・アート)」は童心的な絵画であり、素朴派と訳される。

 

ただ、ナイーブな粒子像が量子論を再現しないわけでもない。例えば、エドワード・ネルソンの確率過程量子化はナイーブな意味の粒子描像で、粒子が酔歩することによって波動性を再現する。

光電効果は、物質に光を当てた時、物質内の電子が光子のエネルギーを吸収して起こる現象である。電子が物質外に放出される外部光電効果と、物質内部で電子が移動して電流が流れたり、起電力を生じたりする内部光電効果とがある。

Fig1_1_2_12
 

金属などの固体表面に光を照射すると、光を吸収してその表面から電子が放出される現象を、光電効果あるいはとくに外部光電効果とよび、放出される自由電子を光電子、電子流を光電流という。気体の原子や分子が光吸収により光電子を放出しイオンになる光イオン化も、光電効果の現象である。飛び出す電子は振動数が低いと放出しない。

 

光と色の基礎知識 No.4

1.2.2 電磁波の発生

上述したように、電磁波というものは、波が電場と磁場との振動である。これはマックスウェルが、電磁方程式をまとめた時に、その方程式から導き出したものである。電磁波の存在は、ヘルツによって発見された。また、水素原子から放出される線スペクトルの可視光線については、バルマー(スイスの中学校の先生)が電磁波発生のメカニズムを発見した。それが、2つのエネルギー順位の電子の遷移によって起こる発見につながっている。

赤外線、可視光線、紫外線および、X線については、以上のようにして、電子により発生する。しかし、γ線は原子核から発生する。これがいわゆる、原子核のγ崩壊である。

光を含めて、電磁波というものの発生の仕方は波長により、少し異なるようである。

電磁波は、電化製品、OA機器などから生じる電場と磁場が時間的・空間的に変化しながら生じる波のことで、コンピュータでは主にディスプレイから発生する。電磁波による人体への悪影響などが指摘されている。

Fig1_1_2_9
 太陽から発せられた電磁波は、地球に届くまでに波長が伸びる。これは、太陽の重力と地球の重力が違うことに起因するもので、アインシュタインの相対性原理で証明された時間と空間の歪み(曲がり)を示している。

Fig1_1_2_10


光と色の基礎知識 No3

1.2  光の波動性

1.2.1 光が波動である現象

波動としての光を光波と呼び、反射屈折回折・干渉などの現象を起こす。ヤングの干渉実験により光の波動説として証明され、その後マクスウェルらにより光は電磁波であることが示された。厳密にはマクスウェルの方程式で記述されるベクトル波であり偏光を持つが、波動光学では簡略化のためにスカラー波として扱うことが多い。

-光のエネルギーは電場振幅2乗に比例する

-光の運動量はポインティング・ベクトルに比例する

光は、狭義には電磁波のうち波長が380 - 760 nmのもの(可視光)をいう。広義には放射と同義であり紫外放射、可視放射、赤外放射を含めて「光」または「光放射」という。

・光の性質

光には以下のような基本的な性質がある。

-光の直進

Fig1_1_2_1
 光は均質な媒質の内部では直進する(エウクレイデスの「光の直進の法則」)。厳密には、重力場では光の経路も彎曲する(測地線)。

また、波の波長が短い場合はスリットを通過するときは平行度を保ったまま直進するが、波長が長い場合はスリットを通過するときは円状の波となって進む。

-光の反射・屈折

Fig1_1_2_2
光は異なる媒質の境界面で反射あるいは屈折する。

凸凹の無い平面鏡に当たった光は、鏡に当たったときと同じ角度で反射する(エウクレイデスの「光の反射の法則」)。光の屈折の際は、スネルの法則が成立する。

-光の透過・吸収

光が透明な媒質の境界面に当たったとき、その一部は境界面で反射するが、残りは媒質の内部を通過する現象を透過という。

光が透明な媒質の内部を通過するとき、その内部へ吸収変換される現象を吸収という。

Fig1_1_2_3
   

-光の干渉と回折

2つの光波(位相差が時間とともに変化しない同一周波数のコーヒーレントな2つの光)が重なり合うことで光が強くなったり弱くなったりする現象を干渉という。

光が伝搬するときに障害物の後方に回り込む現象を回折という。

Fig1_1_2_4
-自然光と偏光

平均的にいずれの方向に対しても同じ強さで振動しながら進行する光を自然光という。

透明な物体に一定の角度で入射したときにみられる反射光が1つの面でしか振動しなくなった光を偏光という。

 光速(光の速度)は、光源の運動状態にかかわらず、不変である(光速度不変の原理)。また、光は物質のない真空中の空間を伝播することができる。光の強さは光源からの距離の2乗に反比例する(ケプラーの光の逆2乗の法則)。

なお、光が、人間の目に入る直線経路は複数とりうることを2穴のピンホールを用いた実験によってシャイネルが確認した(シャイネル試験)。

Fig1_1_2_5
-光の乱反射

 物体の表面がなめらかな面でないとき、その凹凸のために入射した光が、いろいろな方向に反射散乱される現象である。平面のように見える面でも光の波長と同程度の尺度でみると乱雑な凹凸があるために、一方向から光を照射しても乱反射が起って、面上の各点が二次的光源になるので、どの角度からでもその面を見ることができる。

Fig1_1_2_6

-光の散乱

光の散乱とは、光を物質に入射させた時、これを吸収すると同時に光を四方八方に放出する現象をいう。

光散乱は光の反射と同じく、入射光によって誘起された電気双極子の振動から2次波が放出されることによるものである。たとえば原子に光が入射すると、電気双極子の振動が誘起され、それから2次波が放出されるが、多くの原子がまばらに、しかもランダムに分布していれば、これからの2次波を任意の方向で観測した場合に、その強度は各原子からの2次波の強度の和になり、これは一般に0にならない。これが光散乱である。

これに対して原子が密にあり、その密度が一様であるときには、各原子からの2次波は互いに干渉して特定の方向以外では強度が0になる。干渉の結果で消えない2次波は反射波となり、また入射波と干渉して屈折波ができる。このように光散乱は一般に物質が均一でないことに起因するものであり、これには物質表面が一様でなく、そこでも反射光がいろいろな方向に広がる乱反射も含まれるが、ここでは表面の効果は無視して、物質の内部で起こる光散乱について考える。

Fig1_1_2_7

-ホイヘンスの原理

 光波の進行のありさまを作図の上で求めるために 1678 C.ホイヘンスが唱えた原理で、光の波動説の重要な1つの根拠となった。光源から出た光波をまず一次波と考え、その波面の各点がまた光源となって二次波が発生し,次の波面はこれらの二次波の包絡面として得られると仮定して次々に波面を作図することで、光の直進、反射、屈折の現象を説明した。後に G.キルヒホフがこの原理の正しいことを理論的に証明した。

 

Fig1_1_2_8

 

光と色の基礎知識 No.2

1.1 光の性質

1.1.1 光の二重性(­波動性、粒子性)

光が、波動か粒子かという問題は、ニュートン対ホイヘンス以来、古典物理学の問題であった。その後、干渉,回折,屈折等の事実の観測や、Maxwellの古典電磁気学による「光=電磁波」の予言と、Hertzによる電磁波の観測等により、「光=波動」は古典力学では確立されたと思われていた。ちなみに、「光=電磁波」の予言と実証は古典電磁気学の大きな成果といえる。ところが、まもなく、それでは説明できない現象が見つかる。即ち、

光電効果 光(紫外線、X線)を金属に当てると、電子が飛び出す。

であるが、これについてLenardは以下の結果を得た:

個々の電子のエネルギーは光の強さではなく波長による。どんなに弱い光でも波長の短い光ほど高いエネルギーの電子が飛び出す。 

飛び出してくる電子の個数は光の強さによる。

このことは、「光=波動」という考えからは説明しにくい。即ち、光が電磁場の波動であるとすると、電子はその電磁場によって揺り動かされてエネルギーを得ると考えられるが、弱い光ではエネルギーは小さくなるはずである。また、光が弱いときは単位時間に電子の受け取るエネルギーは小さいから、光が当たってから電子が飛び出してくるまでに時間がかかるはずであるが、実際にはそういうことはない。アインシュタインは、この現象に対し、プランクの仮説をさらに押し進めて、光量子仮説を提唱した。 

アインシュタイン(Einsteinの光量子仮説1905年):

振動数$\nu$の光は、 $h\nu$ なるエネルギーを持った粒子(光量子、光子)のように振舞う。光の強さは光子の数に対応する。

即ち、上の光電効果では、光(光子)が電子に衝突して、その電子をたたき出したと考えればよい。光子の量が多ければ(光が強ければ)出てくる電子の数は多くなるし、光子のエネルギーが大きければ(光の振動数が大きければ)出てくる電子のエネルギーは大きくなる。出てくる電子の持つエネルギーは 

Fig1_1_1_2a


E飛び出してきた電子のエネルギー、P:金属中の電子の束縛エネルギー、となるはずである。これは後にミリカン(Millikanによって確かめられた。その後、コンプトン(Comptonの実験1922年)によって、光子が電子と粒子同士の衝突のような弾性衝突をすることが確かめられた。 

 

1.1.2          電磁波

上述したように、電磁波は、空間の電場磁場の変化によって形成された波(波動)のことである。電界と磁界がお互いの電磁誘導によって交互に相手を発生させあうことで、空間そのものが振動する状態が生まれて、この電磁場の周期的な変動が周囲の空間に横波となって伝播していく、エネルギーの放射現象の一種である。そのため、電磁放射とも呼ばれている。

 

Fig1_1_1_1

・ヤング、フレネルとマクスウェル

1800年代初頭、ヤングとオーギュスタン・ジャン・フレネルによる二重スリット実験によってホイヘンスの波動説の証拠が得られた。二重スリット実験によって、格子を通った光は、水の流れが作るものと良く似た干渉縞を作る。光の波長もこの干渉縞のパターンから計算できた。光の波動説はすぐに粒子説に置き換わることはなかったが、粒子説では説明がつかない偏光等の性質も説明できることが判かり、1800年代中頃には光に対する主流な考え方になってきた。

1800年代終わり、ジェームズ・クラーク・マクスウェルは、マクスウェルの方程式により光は電磁波の伝播であることを示した。この方程式は多くの実験によって検証され、ホイヘンスの考えは広く受け入れられていった。

・黒体放射に関するプランクの法則

1901年、マックス・プランクは、黒体放射の光のスペクトルを再生することに成功したと発表した。この問題のために、プランクは放射線を発生する原子のエネルギーは量子化されているという数学的な仮定を置いた。後に、量子化されているのは原子ではなく電磁放射線自身だと提案したのはアインシュタインだった。

 

1.1.3 アインシュタインの光電効果の実験

Fig1_1_1_2

1905年、アインシュタインはそれまで問題となっていた光電効果に対して説明を与えた。彼はこの説明のために、光のエネルギーの量子である光子の存在を仮定した。光電効果では、金属に光を照射することにより、回路に電流が生じる。これは、光が金属から電子を弾き出し、電流が流れたものであると推定された。しかし、暗い青色の光でも電流を発生させるのに対し、強い赤色の光では電流を全く発生させないことが判かった。波動説によると、光の波動の振幅は光の強さに比例するとされ、強い光は必ず大きな電流を発生させるはずである。しかし、奇妙なことに観測の結果はそうならなかった。

アインシュタインは、この難問に対し、電子は離散的な電磁場(光子と呼ばれる量子)からエネルギーを受け取ると説明した。エネルギー量Eは光の周波数fと、次の関係式で結び付けられる。

Fig1_1_1_2b

ここでh6.626 × 10-34ジュールの値を持つプランク定数であり、十分高い周波数の光子のみが電子を弾き出せることが判かる。例えば、青色光の光子は金属から電子を開放するのに十分なエネルギーを持っているのに対し、赤色光の光子は十分なエネルギーを持たない。より高い周波数の光子は、より多くの電子を弾き出せるが、周波数が基準以下になると、いくら強い光でも電子は弾き出せないことが判かる。

アインシュタインは、光電効果の理論によって1921年度のノーベル物理学賞を受賞した。

 

・ド・ブロイの仮説

1924年、ド・ブロイはド・ブロイ波の仮説を発表した。この仮説は光子だけではなく全ての物質が波動性を持つとするもので、波長λと運動量pが次の式で関係付けられた。

Fig1_1_1_2c



これは、光子の運動量pp= E/c、光子の波長λλ= c/fcは真空中の光速度)とした、アインシュタインの式の一般化である。

ド・ブロイの式は3年後に電子について電子回折の観察をする2つの別々の実験によって検証された。アバディーン大学ジョージ・パジェット・トムソンは薄い金属フィルムに電子ビームを通し、予想された干渉パターンを得た。ベル研究所クリントン・デイヴィソンレスター・ジャマーは結晶格子に電子ビームを通して同じ結果を得た。

ド・ブロイはド・ブロイ波の考案によって、1929年にノーベル物理学賞を受賞した。トムソンとディヴィソンも1937年のノーベル物理学賞を分け合った。

・ハイゼンベルクの不確定性原理

ヴェルナー・ハイゼンベルクは、量子力学の公式化を進める中で、次のように表わされる不確定性原理を仮定した。

Fig1_1_1_d



ここで、

Δ標準偏差でxpはそれぞれ粒子の位置と運動量、\hbarはプランク定数を2πで除したものを表わしている。(\hbarh/4π

ハイゼンベルクは、初めのうちは自身の発見を、測定のプロセス上生じる現象だと説明していた。粒子の位置を正確に測定しようとすると運動量が乱され、逆に粒子の運動量を正確に測定しようとすると位置が乱される。しかしこれは、現在では不確定性の一部にすぎず、不確定性は観測のプロセスではなく粒子そのものに存在することが理解されている。

実際に、現在の不確定性原理の説明は、ニールス・ボーアとハイゼンベルクによって考案されたコペンハーゲン解釈に拡張され、粒子の波動性に明確に依存している。ここでは波動の正確な位置を論じることは意味をなさず、粒子の完全に正確な位置も決まらない。さらに位置が比較的よく定まると、波動はパルス状になり、波長は定まらなくなる。

ド・ブロイ自身は、粒子と波動の二重性を説明するためにパイロット波を提案していた。この考え方では、それぞれの粒子の位置と運動量は精度良く定まるが、シュレーディンガーの式に由来する波の性質も示す。パイロット波理論は、複数の粒子に適応すると局在性を示さなくなることから、初めは否定された。しかし、すぐに非局在性は、量子理論の積分により得られることが判かった。また、デヴィッド・ボームによってド・ブロイのモデルが拡張された。ボームの理論では、粒子と波動の二重性は物質自体の性質ではなく、粒子の動きによって生じるものとされた。


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