1.2  光の波動性

1.2.1 光が波動である現象

波動としての光を光波と呼び、反射屈折回折・干渉などの現象を起こす。ヤングの干渉実験により光の波動説として証明され、その後マクスウェルらにより光は電磁波であることが示された。厳密にはマクスウェルの方程式で記述されるベクトル波であり偏光を持つが、波動光学では簡略化のためにスカラー波として扱うことが多い。

-光のエネルギーは電場振幅2乗に比例する

-光の運動量はポインティング・ベクトルに比例する

光は、狭義には電磁波のうち波長が380 - 760 nmのもの(可視光)をいう。広義には放射と同義であり紫外放射、可視放射、赤外放射を含めて「光」または「光放射」という。

・光の性質

光には以下のような基本的な性質がある。

-光の直進

Fig1_1_2_1
 光は均質な媒質の内部では直進する(エウクレイデスの「光の直進の法則」)。厳密には、重力場では光の経路も彎曲する(測地線)。

また、波の波長が短い場合はスリットを通過するときは平行度を保ったまま直進するが、波長が長い場合はスリットを通過するときは円状の波となって進む。

-光の反射・屈折

Fig1_1_2_2
光は異なる媒質の境界面で反射あるいは屈折する。

凸凹の無い平面鏡に当たった光は、鏡に当たったときと同じ角度で反射する(エウクレイデスの「光の反射の法則」)。光の屈折の際は、スネルの法則が成立する。

-光の透過・吸収

光が透明な媒質の境界面に当たったとき、その一部は境界面で反射するが、残りは媒質の内部を通過する現象を透過という。

光が透明な媒質の内部を通過するとき、その内部へ吸収変換される現象を吸収という。

Fig1_1_2_3
   

-光の干渉と回折

2つの光波(位相差が時間とともに変化しない同一周波数のコーヒーレントな2つの光)が重なり合うことで光が強くなったり弱くなったりする現象を干渉という。

光が伝搬するときに障害物の後方に回り込む現象を回折という。

Fig1_1_2_4
-自然光と偏光

平均的にいずれの方向に対しても同じ強さで振動しながら進行する光を自然光という。

透明な物体に一定の角度で入射したときにみられる反射光が1つの面でしか振動しなくなった光を偏光という。

 光速(光の速度)は、光源の運動状態にかかわらず、不変である(光速度不変の原理)。また、光は物質のない真空中の空間を伝播することができる。光の強さは光源からの距離の2乗に反比例する(ケプラーの光の逆2乗の法則)。

なお、光が、人間の目に入る直線経路は複数とりうることを2穴のピンホールを用いた実験によってシャイネルが確認した(シャイネル試験)。

Fig1_1_2_5
-光の乱反射

 物体の表面がなめらかな面でないとき、その凹凸のために入射した光が、いろいろな方向に反射散乱される現象である。平面のように見える面でも光の波長と同程度の尺度でみると乱雑な凹凸があるために、一方向から光を照射しても乱反射が起って、面上の各点が二次的光源になるので、どの角度からでもその面を見ることができる。

Fig1_1_2_6

-光の散乱

光の散乱とは、光を物質に入射させた時、これを吸収すると同時に光を四方八方に放出する現象をいう。

光散乱は光の反射と同じく、入射光によって誘起された電気双極子の振動から2次波が放出されることによるものである。たとえば原子に光が入射すると、電気双極子の振動が誘起され、それから2次波が放出されるが、多くの原子がまばらに、しかもランダムに分布していれば、これからの2次波を任意の方向で観測した場合に、その強度は各原子からの2次波の強度の和になり、これは一般に0にならない。これが光散乱である。

これに対して原子が密にあり、その密度が一様であるときには、各原子からの2次波は互いに干渉して特定の方向以外では強度が0になる。干渉の結果で消えない2次波は反射波となり、また入射波と干渉して屈折波ができる。このように光散乱は一般に物質が均一でないことに起因するものであり、これには物質表面が一様でなく、そこでも反射光がいろいろな方向に広がる乱反射も含まれるが、ここでは表面の効果は無視して、物質の内部で起こる光散乱について考える。

Fig1_1_2_7

-ホイヘンスの原理

 光波の進行のありさまを作図の上で求めるために 1678 C.ホイヘンスが唱えた原理で、光の波動説の重要な1つの根拠となった。光源から出た光波をまず一次波と考え、その波面の各点がまた光源となって二次波が発生し,次の波面はこれらの二次波の包絡面として得られると仮定して次々に波面を作図することで、光の直進、反射、屈折の現象を説明した。後に G.キルヒホフがこの原理の正しいことを理論的に証明した。

 

Fig1_1_2_8