今年のノーベル生理学・医学賞の受賞した本庶佑・京都大学特別教授が1210日に開かれる授賞式を前に、日本経済新聞社の単独インタビューで語った内容「ばかげた挑戦が革新生む」の骨子は「イノベーションとは結果だ。とんでもないと思うようなことから始まって、結果として世の中を大きく変える。」ということであった。(12月3日に発行された日経新聞記載の内容を一部改変した)

よく考えてみると確かにそうだと確信できる(私が日頃考えていたことを、本庶先生はよく言った、という思いである)。卑近な例では、万能なiPS細胞を開発して病で苦しんでいる患者を助けようと考えたとする。それ自体は確かに実現できたらものすごく社会に貢献するテーマだが、これだけではイノベーションとは言えない。理由は、結果を伴っていないからである。つまり、故事ことわざにある「絵に書いた牡丹餅」とそっくりである。これは、「どんなに上手に描かれていても、絵に描かれた餅は見るだけで食べられない。転じて、実際の役には立たないものや、実現する見込みのないもの」という意味である。

iPS細胞に関する研究・開発で京都大学の山中伸弥先生がノーベル賞を受賞したのは記憶に新しい出来事である。

イノベーションは何も医学界に限らず、神羅万象に関わる業界全てに関して、なんでも、かんでも、いつでも、どこでも適用できるもので、これなくしては技術の発展は望めない。

写真や映像を生業としているクリエータに関しても同様なことが言え、実際に現場で扱われている実践行為に対して課題想起や問題意識を持ち、どれだけモチベーションを高められ、かつ、維持できるかが常に問われるのである。

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 恣意的な映像を撮るのにやみくもにシャッタをバシャバシャ切っても仕方がないし、現場で困窮した手法や問題などに対して、どんな手段・方法でそれらを改善していくかを考えられなけば(極端な言い方をすれば)あまり意味を持たないし、むしろ不合理だと考える。

私の経験では、日頃抱えている問題は「必ず原因があり、解決できる」ということである。ただ、問題の内容によっては、10年、100年と長い年月を経ないと解決できないことはあるが、概して基礎技術さえ持ち合わせていればその殆どが解決できるものばかりである。

 「セミナなどでこれは大学で教えたレベルの技術だよ。」というと大方の写真家は恐れおののいてそれを習得してやろうという気概が見られない。でも、大学で教える内容はごく基礎的なもので、現場で活躍している写真家はそれ以上の技術・技能があるのが現実なのだが、言葉だけで決めつけて自己努力を怠ってしまっているのはとても残念である。

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 映像産業は、何も写真家の世界だけだと言えず、関連機器メーカーと関連ソフト開発メーカーをはじめ、デザイナー、カラーコーディネーター、製版業や印刷業に従事している人など多くのビジネスマンがしのぎを削っている。従って、業界を活性化させ、技術や文化を維持発展させることが急務にも関わらず、他人任せにしている現状を打破することが今後のモチベーション高揚につながると確信する。

要するに、こういうことを意識して即行動に移せば、その先には必ず技術(科学)の進歩が実践でき、その結果として業界の発展にも貢献できることになる。

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