アンディマンのテクノロジー(援技力)

写真表現に関わる専門的な知識を補うために設けたブログです。 新たらしい時代に相応しい技術情報を掲載していきます。 普段疑問に思った問題の解決に繋げるテーマを醸成していきます。

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光と色の基礎知識 No.8

1.2.6 黒体放射

 黒体Black body、あるいは完全放射体)とは、外部から入射する熱放射など(電磁波による)を、あらゆる波長に渡って完全に吸収し、また放出できる物体のことである。完全な意味での黒体(完全黒体)は、現実には存在しないといわれているが、ブラックホールなど近似的にそうみなせる物質、物体は存在している。

黒体からの熱などの放射を黒体放射という(以前は黒体輻射ともいった)。ある温度の黒体から放射される電磁波のスペクトルは一定である。温度 T において、波長 λ の電磁波の黒体放射強度 B(λ)

Fig1_1_2_16_0



で表される。これをプランク分布という。プランク分布を全波長領域で積分することで、黒体放射の全エネルギーが T4 に比例する(E =σT4σシュテファン=ボルツマン定数)というシュテファン=ボルツマンの法則を得る。また、微分して B(λ) が極大となる λ を求めることで、放射強度最大の波長が T  反比例するというヴィーンの変位則を得る。

Fig1_1_2_16
・空洞放射

十分に大きな空洞を考え、空洞を囲む壁は光を含む一切の電磁波を遮断するものとする。この空洞に、その大きさに対し十分に小さな孔を開ける。孔を開けることによる空洞内部の状態の変化は無視できるものとする。外部からその孔を通して入った電磁波(ある特定の波長のものが光)が、空洞内部で反射するなどして再び出てくることは、孔が十分に小さければ無視することができる。つまり、この空洞は、外部から入射する電磁波を(ほぼ)完全に吸収する黒体とみなすことができる。

この空洞からの熱などの放射を空洞放射という。

・黒体放射と量子力学

理想的な黒体放射を現実にもっとも再現するとされる空洞放射が温度のみに依存する、という法則はグスターブ・キルヒホッフにより1859年に発見された。以来、空洞放射のスペクトルを説明する理論が研究され、最終的に1900年にマックス・プランクによりプランク分布が発見されたことで、その理論が完成された。

物理的に黒体放射をプランク分布で説明するためには、黒体が電磁波を放出する(電気双極子が振動する)ときの振動子の量子化を仮定する必要がある プランクの法則)。つまり、振動子が持ちうるエネルギー (E) は振動数 (ν) の整数倍に比例しなければならない。

E = nhν (n = 0, 1, 2, ...)

この比例定数 h = 6.626×10-34 [Js] は後に、プランク定数とよばれ物理学の基本定数となった。これは古典力学と反する仮定であった(古典力学では物理量は連続な値をとり、量子化されない)が、1905年にアルベルト・アインシュタインがこのプランクの量子化の仮定と、光子の概念を用いて光電効果を説明したことにより、この量子化の仮定に基づいた量子力学が築かれることとなった。

・灰色体

工業製品などでの設計では、対象の温度範囲が限られていることから、しばしば放射率が周波数に依存しない理想的な物体として灰色体を用いている。この灰色体は、黒体の放射率を 1 より小さい定数としたものと等価であり、黒体よりも現実的なモデルを与える。

・黒体放射の原理

物体が低い温度の場合でも周りからの光を反射してしまうと、それは「物体から光が放射されている」状態と同じことなので、プランクの法則で説明される物体の温度と発光色の関係は崩れてしまう。また、一般的な物質は高温になったとしても全ての波長の光を出すことはできない。発光色をプリズムなどで分光すると、どこかの振動数に対応する光が欠けていたりする。そんなわけで、プランクの法則で説明される物体は 「全ての光を反射せずに吸収し、かつ、高温では全ての波長の光を欠けること無く出せる」という、理想化した物体ということになる。ただ、反射光の分を差し引いてやれば物体の温度と放射の関係はおおよそプランクの法則に従うので、そこそこ実用的な法則であるといえる。

 

Fig1_1_2_17

光と色の基礎知識 No.7

1.2.5 電磁誘導

 電磁誘導とは、磁束が変動する環境下に存在する導体電位差電圧)が生じる現象である。また、このとき発生した電流を誘導電流という。

一般にはマイケル・ファラデーによって1831に誘導現象が発見されたとされるが、先にジョセフ・ヘンリーに発見されている。また、フランセスコ・ツァンテデシFrancesco Zantedeschi)が1829に行った研究によって既に予想されていたともいわれている。

ファラデーは、閉じた経路に発生する起電力が、その経路によって囲われた任意の面を通過する磁束の変化率に比例することを発見した。すなわちこれは、導体によって囲われた面を通過する磁束が変化した時、すべての閉回路には電流が流れることを意味する。これは、磁束の強さそれ自体が変化した場合であっても、導体が移動した場合であっても適用される。

電磁誘導は、発電機誘導電動機変圧器など、多くの電気機器の動作原理となっている。

・電磁誘導における起電力

ファラデーの電磁誘導の法則は、次のように示される。

Fig1_1_2_15a



ここで、 ε は、起電力 (V)

ΦB は、磁束 (Wb) とする。

同じ領域に N 回巻かれたコイルが置かれた場合、ファラデーの電磁誘導の法則は、次のようになる。

Fig1_1_2_15b


ここで、 N は、電線の巻数とする。

起電力は磁束の方向に向かって左回りに発生するが、物理学の慣習では、いわゆる右ねじ関係が正であるとされるため、(これは物理に限った話ではなく数学でも例えばクロス積などが同様に定められている。) 左ねじ関係であるファラデーの電磁誘導の式には負号がつく。 逆に言えば、慣習に逆らって左ねじ関係を正と定めれば、負号はつかない。よって、ファラデーの電磁誘導の式は起電力の大きさだけでなく、向きも示している。

また、起電力の向きだけ(大きさは含まない)を示した法則として、レンツの法則、つまり、「回路に発生する起電力は、起電力によって回路を流れる電流が起こす磁束が、与えられた磁束変化に逆らうような方向で発生する。」が存在する。

Fig1_1_2_15

光と色の基礎知識 No.6

1.2.4 二重スリット実験

二重スリット実験は、量子の波動性と粒子性の問題を典型的に示す実験である。リチャード・P・ファインマンはこれを「量子力学の精髄」と呼んだ。ヤングの実験で使われた光の代わりに一個の電子を使ったものである。

この実験は、古典的な思考実験であったが、実際の実験は1961年にテュービンゲン大学のクラウス・イェンソンによって複数の電子を用いて行われたのが最初であり、「1回に1個の電子」を用いる形での実験は1974年になってピエール・ジョルジョ・メルリらによってミラノ大学で行われた。その後、技術の進歩を反映した追試が1989年に外村彰らによって行われた。

Fig1_1_2_13

 電子銃から電子を発射して、向こう側の写真乾板(スクリーン)に到達させる。その途中は真空になっている。ただし、電子の通り道にあたる位置についたてとなる板を置く。その板には2本のスリット(細長い穴)がある。

電子は、電子銃から発射されたあと、2本あるスリットを通り 向こう側のスクリーンに到達する。スクリーンには、電子による感光で濃淡の縞模様が像として描かれる。このような濃淡の縞模様は電子に波動性があることを示す。実際、その縞模様は波の干渉縞の模様と同じである。

この実験では、電子を1つずつ発射させても、同じ結果が得られる。つまり、電子を一度に1つずつ発射させることを何度も何度も繰り返してから その合計に当たるものをスクリーンで見ると、やはり同じような干渉縞が生じている。

1999年には、電子や光子のような極微の粒子の替わりに、フラーレンという大きな分子を使って同様の実験を行った場合にも、同様の干渉縞が生じることが確認されている。

 「二重スリット実験」として知られるこの実験は、下図のように行われる。電子顕微鏡の中の電子源から電子を1個ずつ発射する。発射された電子は「電子線バイプリズム」という装置を通る。この装置は、中央には細い糸状の電極が張ってあり、その両側に2枚の平行な金属板を置いたものである。電極の両側を通過した電子は、検出器で11個検出される。驚くことに、電子1個を100%に近い効率で検出する感度を持っている。

Fig1_1_2_14

 この実験結果の最も不思議なことは、着弾の確率分布が干渉縞を描いていることである。1個の粒子の着弾は、一般的に思い描かれるような粒子像と完全に一致しているが、多数の粒子が描く模様は「広がった空間の確率分布を支配する何か」(=波と考えられている)の存在を指し示している。粒子と波の二重性について、多数の粒子の振る舞いが波としての性質を形作っているとする説が過去にはあった。しかし、この実験は、単一の粒子であっても、「広がった空間の確率分布を支配する何か」の存在を示しており、一般的な直観に反する奇妙な現象である。何故なら、一般的に思い描かれるような粒子像では粒子は一点に存在するはずであり、「広がった空間の確率分布を支配する何か」と同じとは考えにくいからである。しかし、この奇妙な実験結果からは、単一の粒子が「広がった空間の確率分布を支配する何か」の性質を併せ持つという一般的な直観に反する事実を認めるしかない。俄には信じ難いが、これこそが量子の本質的な性質であることは、実験が示している動かし難い真実である。なお、粒子として一方のスリットを通ったとする見方と、波として双方のスリットを通ったとする見方は、1つの現象を違う側面から見ただけと考えれば十分に両立可能であり、どちらが真の姿であるかを論じる意味は全くない。

この実験の結果が「電子が1つの粒子として、2本のスリットを同時に通過していること」を示すと主張する者もいるが、両方のスリットを粒子が通過した事実を全く確認しておらず、その見解は証拠不十分といわざるを得ない。事実、パイロット解釈を用いれば、片方のスリットの通過でこの実験結果を説明することが可能である。パイロット解釈は、この実験とは別の理由により下火となった解釈であるが、この実験結果にはパイロット解釈を否定する根拠が含まれていないため、この実験結果を「電子が1つの粒子として、2本のスリットを同時に通過していること」の証拠とすることはできない。

 

光と色の基礎知識 No.5

1.2.3 電子状態

 電子状態または電子構造とは、物質原子分子なども含む)における電子の状態のことである。電子状態間の遷移を電子遷移という。

・概説

電子の状態を表す形式が様々考えられている。

具体的な電子の状態として、電荷密度(電荷分布)、バンド構造(あるいは電子の準位)、磁気構造(あるいは電子のスピンの状態)、フェルミ面状態密度、原子間の結合の状態(電荷分布と関係)などが挙げられる。これら以外にも電子状態を示す様式は、数多く存在する。

「電子状態」と「電子構造」は通常は同義と考えてよいが、場合によってその意味合いが微妙に異なることがある。

-電子状態の遷移 (電子遷移)

-光吸収による遷移(光学遷移)

分子電磁波を吸収すると内部エネルギーが増大する。このエネルギーの増加は光量子のエネルギー ΔE に等しく、次の関係で示される。

ΔE = hν = hc / λ

ここで h プランク定数ν は電磁波の振動数λは電磁波の波長c は光速度である。

分子は電磁波を吸収したことによって電子状態に変化が生じる。具体的には電子エネルギー、振動エネルギー、回転エネルギーに変化を起こす。最もエネルギーの低い電子状態は基底状態と呼ばれ、それより高い電子状態は励起状態と呼ばれている。基底状態、励起状態にはいくつかの振動準位があり、各振動準位にもいくつかの回転準位がある。多くの分子で遠赤外、マイクロ波のようなエネルギーが低い電磁波を吸収したとすると回転状態のみに変化が生じ、中・近赤外程度であれば振動、回転状態に変化が生じる、可視光線および紫外線の場合には電子、振動、回転状態に変化が生じることになる。

-電子状態遷移の選択律

分子の電子状態が光学遷移を起こすためには以下のような選択律が存在する。選択律に従って起こる遷移は、許容遷移とよばれ、ルールに従っていない遷移は、禁制遷移とよばれている。しかし、禁制遷移であっても分子内、分子間の摂動により遷移がおこることがある。

・パリティー(偶奇性)に関する選択律

1つの光子を吸収する遷移においてはパリティーの変化を伴う( g - u は許容、g - g および u - u は禁制)。

-多重度に関する選択律

多重度は変化しない(S の変化は0

状態の対称性に由来する選択律

・電子遷移の種類

π*軌道への遷移 — π*軌道の励起状態が存在する分子は、近赤外、可視光から近紫外光領域にかけて遷移を持つことから、古くから紫外・可視・近赤外分光法 (UV-Vis-NIR) により観測がなされてきた。

π-π*遷移 二重結合のπ電子に由来する遷移。アルケンなどで見られ、孤立したC=C結合は190ナノメートル付近に吸収を示すが、共役が伸張すれば、より波長の長い(エネルギーの低い)光でも遷移を起こす。

n-π*遷移 カルボニル基などの孤立電子対に由来する遷移。ケトンなどで見られ、300nm付近に吸収を示す。禁制遷移であるため一般に吸光度は小さい。

σ*軌道への遷移 — π*軌道への遷移と同様だが、σ*軌道は一般にエネルギー準位が高いため遷移により高いエネルギーを必要とし、吸収するのは主に紫外光である。

σ-σ*遷移 — C−C結合やC−H結合に見られる。吸収するのは約150nm光である。

n-σ*遷移 エーテル、アミン、チオエーテルなどで見られる、孤立電子対のσ*軌道への遷移。190nm程度の光を吸収して遷移を起こす。

電荷移動遷移(CT遷移)原子間の電子の移動を伴う遷移。主に錯体化学で取り扱われる。

バンド間遷移 固体においてバンド理論により記述される遷移。

Fig1_1_2_11

・粒子性

 量子の粒子性とは、粒子の存在を仮定すると説明が容易ないくつもの実験の存在を根拠にしている。プランクによるエネルギー量子、光電効果、コンプトン散乱など、粒子と考えると解釈が容易な実験が多々ある。しかしながら、このことは、ナイーブ*1な意味での粒子の存在を示すわけではない。

 

 *1ナイーブ (naïve) とは、日本では、「純真」「素直」「素朴」「無邪気」「飾り気がない」などを意味するフランス語形容詞として使われている。ただし、女性形であり、男性形はナイフ (naïf)という。ラテン語で同様の意味を持つ(ただし他にもっと広い意味も持つ)nativus が語源で、同じ語源の言葉には英語のネイティヴ (native) がある。ドイツ語スウェーデン語ではnaivと書き、オランダ語ではnaïefと書き、いずれも「幼稚」「無経験」などを意味する。

例えば、美術の「アール・ナイフ(英語 ナイーブ・アート)」は童心的な絵画であり、素朴派と訳される。

 

ただ、ナイーブな粒子像が量子論を再現しないわけでもない。例えば、エドワード・ネルソンの確率過程量子化はナイーブな意味の粒子描像で、粒子が酔歩することによって波動性を再現する。

光電効果は、物質に光を当てた時、物質内の電子が光子のエネルギーを吸収して起こる現象である。電子が物質外に放出される外部光電効果と、物質内部で電子が移動して電流が流れたり、起電力を生じたりする内部光電効果とがある。

Fig1_1_2_12
 

金属などの固体表面に光を照射すると、光を吸収してその表面から電子が放出される現象を、光電効果あるいはとくに外部光電効果とよび、放出される自由電子を光電子、電子流を光電流という。気体の原子や分子が光吸収により光電子を放出しイオンになる光イオン化も、光電効果の現象である。飛び出す電子は振動数が低いと放出しない。

 

光と色の基礎知識 No.4

1.2.2 電磁波の発生

上述したように、電磁波というものは、波が電場と磁場との振動である。これはマックスウェルが、電磁方程式をまとめた時に、その方程式から導き出したものである。電磁波の存在は、ヘルツによって発見された。また、水素原子から放出される線スペクトルの可視光線については、バルマー(スイスの中学校の先生)が電磁波発生のメカニズムを発見した。それが、2つのエネルギー順位の電子の遷移によって起こる発見につながっている。

赤外線、可視光線、紫外線および、X線については、以上のようにして、電子により発生する。しかし、γ線は原子核から発生する。これがいわゆる、原子核のγ崩壊である。

光を含めて、電磁波というものの発生の仕方は波長により、少し異なるようである。

電磁波は、電化製品、OA機器などから生じる電場と磁場が時間的・空間的に変化しながら生じる波のことで、コンピュータでは主にディスプレイから発生する。電磁波による人体への悪影響などが指摘されている。

Fig1_1_2_9
 太陽から発せられた電磁波は、地球に届くまでに波長が伸びる。これは、太陽の重力と地球の重力が違うことに起因するもので、アインシュタインの相対性原理で証明された時間と空間の歪み(曲がり)を示している。

Fig1_1_2_10


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